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変な使命感に取りつかれた政治家~緊縮財政へのこだわりは意地か保身か…?~

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久々に、野田佳彦元首相の記事を見た気がしますが…。 「消費税ゼロ案は無責任 立民・元首相 野田佳彦氏」 https://www.nikkei.com/nkd/company/article/?DisplayType=1&ba=9&ng=DGKKZO67677320U0A221C2PP8000&scode=8301 財政の健全化はポストコロナの最大のテーマになる。その方法は経済成長によって税収を上げるか、歳出削減か、増税かの3通りしかない。 菅義偉首相は今後10年は消費税増税は不要との考えを示す。議論を封じるやり方がいいのだろうか。選択肢はいろいろあったほうがいい。 立憲民主党の枝野幸男代表は党代表選で与野党合意を条件としつつ、一時的な税率ゼロに言及した。選択肢としては封じないが、 ゼロにすると引き上げるのは大変 だ。 税率を3%から5%、そして今の10%へと上げるのに平成時代の大部分を使った。その労力を考えると基本的に消費税減税に慎重だ。 (後略) うーん、なんだか残念だなというのが正直な感想です。 野田さんは首相時代に消費税増税への道筋を示したことで有名(悪名?)ですが、 やはり、いまだに消費税は社会保障の財源であり、 増税は避けられない、という考えでいらっしゃるようです。 自らが政治生命をかけて増税を実現したこともあり、 増税にこだわるのは、気持ちとしてはわかります。 わかりますが、、、そのこだわりが日本の経済成長を阻んでしまうのであれば、 これほど迷惑な話はありません。 「出典:新世紀のビッグブラザーへ」http://mtdata.jp/data_71.html#nendo このグラフが示す通り、 野田元首相の言う 「平成時代の大部分を使った」 (98年、14年、19年) 消費税率の引き上げにより、 我が国の経済成長率はそのたびに低迷しています。 野田さんには、政治家たるものこうしたデータぐらい見てほしいものです。 経済成長率を増税で低迷させることに使命感を燃やすことは、 勝手にしていただければいいのですが(やがて落選の憂き目にあうでしょう)、 その使命感を全国紙で堂々と主張し、 経済成長を止める増税に加担するのは控えていただきたいです。 でも、おそらく野田さんのような考え方の持ち主が 今の日本の政治家の大半なんだろうなぁ…。 自分の...

公共事業悪玉論の蔓延が招いた悲劇~もはや日本は自分の国土を自分たちで十分に整備できない!?~

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1990年代半ばごろから、 「公共事業はムダだ!」 という世論が盛り上がっていったようですが、あまりにも公共事業を目の敵にしすぎたせいで、もはや取り返しのつかない事態になっているようです。 【公共事業、人材難で滞る 入札不成立、4年連続増加へ】 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO56436860V00C20A3EE8000/   予算計上された公共事業の執行が人手不足で滞っている。国土交通省によると都道府県発注工事の入札で企業が手を上げなかったり、応札価格が安く落札に至らなかったりした件数は2018年度まで3年連続で増加し、19年度上半期も前年を上回って推移する 。豪雨や台風の被災地で入札の不成立が目立つ。公共事業による景気下支え効果は政府の期待ほど出ないおそれがある。 (後略) …。 要は、 政府や自治体が必要な公共事業を発注しても、それを担う人材が十分に存在しないため、執り行えない のです。 なぜ、人材がいなくなってしまったのでしょうか? それはほかでもなく、 世論の流れを受けて政府が公共事業を減らし続けたから です。 【日本の公共事業関係費の推移(兆円)】 (出典:「新世紀のビッグブラザーへ  http://mtdata.jp/data_59.html#koukyoujigyou ) 数字で見ると一目瞭然ですね…。 正に右肩下がりの一辺倒! リーマンショック後の2009年は麻生政権が景気対策として公共事業を大規模に行ったので少し伸びていますが、それ以外は削減の一途。 これだけ仕事が減れば、人材が育つはずがありません。 確かに、公共事業を叩いて拍手喝さいを受けることは、その時だけ気持ちいいかもしれません。 しかし、長い目で見ると 他人を叩く行為は自分の首を絞める行為に他ならない とわかります。 しかも厄介なのは、こうして 一度失われた人材や技術は、元に戻すことはほとんど不可能である ということです。 後先を考えずに他人を叩き続けたツケを、我々が支払うことになりますね…。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 人気ブログランキングに参加して...

アメリカ大統領選の候補者選びから見えるアメリカの今~若者はサンダース氏に未来を託す!?~

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先日、アメリカ大統領選挙の民主党候補選びの第2戦となる、東部ニューハンプシャー州予備選でバーニー・サンダース氏が勝利しました。 【格差是正、若者が支持 サンダース氏勝利、中道派混沌】 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55526450S0A210C2EA2000/ 【マンチェスター(米ニューハンプシャー州)=永沢毅】米大統領選の民主党候補指名争いは、第2戦の東部ニューハンプシャー州予備選を制した 左派のバーニー・サンダース上院議員(78)が先行する展開となった。 対抗する中道・穏健派は前インディアナ州サウスベンド市長のピート・ブティジェッジ氏(38)やエイミー・クロブシャー上院議員(59)が追う一方、ジョー・バイデン前副大統領(77)は5位に沈むなど混沌としている。 「次もその次の州でも勝つ」。サンダース氏は11日夜の集会で、支持者を前に指名獲得に自信を示した。勝利の原動力は若者の支持だ。米メディアの出口調査によると、 18~29歳の51%、30~44歳でも36%の支持を得て他候補を引き離した。 サンダース氏は全米で1.5兆ドル(約165兆円)の残高がある学生ローンを政府が負担して全額免除すると表明。国民皆保険も公約に掲げ、富裕層や企業への増税で10年で14兆ドルの財源を確保すると主張する。格差への不満と将来不安が強まる低中所得層には、「民主社会主義者」を自称するサンダース氏の構想が魅力的に映る。 (後略) …。 トランプ大統領が当選した2016年の大統領選でも、サンダース氏は選挙当初はいわゆる「泡沫候補」扱いながら善戦しました。 彼はしばしば自身を 「民主社会主義者」 と称するようです。 「自由主義」 の守護国たるアメリカで、社会主義を堂々と標榜する候補が1度ならず2度までも躍進するとは、これはいかに…? 記事にもある通り、サンダース氏は特に若者からの支持が厚く、彼の打ち出す格差是正の政策がその要因のようです。 政治に助けを求めたくなるほどに、アメリカでは若者が追い詰められている ということだと思います。 サンダース氏は明らかに、富裕層の声をより重視する世界およびアメリカの流れに逆らおうとしているため、彼がこのまますんなりと選挙で躍進を続けるとは思えま...

EUの政策転換手法を学ぼう!~財政拡大実現への工夫はいくらでもある!?~

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日本経済がデフレから脱却するためには、 需要不足を埋め合わせる規模の財政支出の拡大が不可欠 なのは言うまでもありません。 しかし、それを実現するにはいわゆる 「国の借金」 に関するウソを明らかにして、インフレ率という真の 「財政規律」 を基に、現在の日本の政策を縛り付けている 「緊縮財政」 を打破しなければなりません。 とはいえ、そう簡単にはいかないのが現実です。 せめて「財政規律」について、政府の負債の絶対額に注目すべきではないと理解している人が増えてくれれば、と考えていましたが…、 欧州連合(EU) の政策担当者が、財政支出の拡大へ興味深い取り組みを始めるようです。 【欧州、財政ルール見直し 環境やデジタル投資なら 赤字基準適用外に】 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO55287630V00C20A2EA1000/ 【ブリュッセル=竹内康雄】 欧州連合(EU) の欧州委員会は5日、財政ルールの改革案を公表した。 現在の厳格なルールを一部緩和し、環境やデジタル分野への投資に限って赤字などへの算入基準の適用外にすることを検討する。 景気動向に関係なく有望分野に予算を投じられるようにして経済成長につなげるとともに、財政ルールに不満を抱く南欧諸国の意見を反映し、分断を回避する思惑もある。 (後略) …。 EUは、加盟国内が慢性的な需要不足で経済の停滞が続く中、なんとか財政拡大を実現しようと、投資は財政規律の枠から外すべきだ!という議論を始めた ようです。 このままこの考え方がすんなり実現するとは思いませんが、実に工夫された取り組みだと思います。 主流派経済学の誤りから、財政政策が打てない仕組みが整えられてしまったEU。 そんな中でもルールの抜け道をつくることで、何とか財政出動して不況を乗り切ろうとする。 これこそ、今の日本の政策担当者に求められていることではないでしょうか? 様々な利害関係が渦巻くこの複雑な世の中で(特に今は緊縮財政派の発言力が圧倒的に強い)、何かを実現するには膨大な調整や根回しが必要です。 それが嫌ならば、革命でも起こして権力を一手にするしかない。 そんなことは現実的ではない以上、この記事で紹介されているよ...

〝A級戦犯〟の外交官・松岡洋右氏が伝えたかったこと 後編~アメリカが焚書した理由と現代の日本人への警告~

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前回 「〝A級戦犯〟の外交官・松岡洋右氏が伝えたかったこと 前編~天才外交官のロシア・中国・満州観~   https://eskunsf.blogspot.com/2019/12/a.html 」からの続きを書きます。 前回の投稿では、アメリカが 焚書 扱いとした 「東亜全局の動揺」 を基に、戦前に活躍した外交官・松岡洋右氏が当時、どのようにロシアや中国、満州を見ていたのかについて書きました。 今回は、 なぜアメリカが同書籍を焚書扱いにしたか について書こうと思います。 そもそも焚書とは、 書物を焼き捨てる行為のことで、時の権力者が自分たちにとって都合の悪い過去の人物の考え方や事実などを歴史から抹消するため に行われます。 言論統制や検閲の一種ですね。 では、アメリカはなぜ「東亜全局の動揺」を焚書したのか…? それは当然ながら、 その書籍にアメリカにとって不都合なことが書かれているから ですね。 その不都合なこととは何かと期待(?)しながら同書を読み進めていくと、こんなことが書かれていました。 「大和民族は二千五百年史、否維新以降六十年余年の歴史が示す通り、 自己の安寧と存立とを脅かされぬ限り、決して戈をとって立つものではない。日 本人は又寡欲である、寧ろ与うることを楽しみ、取ることを忌む。」 このように、 日本人は自己防衛以外には安易に武器を持たない ことを示した上で、その実例として、 「シベリア出兵、山東出兵などが何故成功しなかったかと問わば、 その政策が誤って居たが為ではない、又我が心事が公明でなかった為でもない。主として大和民族のこの天分に累せられたからである。 」 と、自己防衛の範疇を超えた軍事行動がことごとく失敗に終わっている事実を示しています。 前回紹介したように、 昭和初期の日本の外交官が、ロシアや中国(支那)に対して強硬姿勢ではなく、主張すべきことは主張しながら、あくまでも共存共栄の道を志していたこと。 さらに、日本は自存自衛以外望んでなかったこと がこの本の記述から浮かび上がってきます。 そりゃ、アメリカも焚書にしますね…。この書籍に書かれていることが日本人に広まれば、 日本を悪の帝国扱いにしたかったアメリカの思惑が揺らぎますか...

〝A級戦犯〟の外交官・松岡洋右氏が伝えたかったこと 前編~天才外交官のロシア・中国・満州観~

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松岡洋右 氏といえば、学生時代に学校で日本史を勉強した知識を元にすれば、 「日独伊三国同盟の成立を主導し、日本を戦争に導いた人」 や 「国際連盟脱退を決めて、日本を世界から孤立させた人」 というイメージあるかと思います。 つまり、 軍国主義者 という感じであまりよくないイメージですね。 現在、 経営科学出版 さんが粋な企画をしており、その松岡氏が満州事変勃発の直前に書き上げた 「東亜全局の動揺」 という本を復刻販売しています。 【戦後、GHQに封印された天才外交官の遺言が復活】 https://kamijimayoshiro.jp/KJBURN01/ad/adw/lp01/?gclid=EAIaIQobChMIurmG06Ge5gIVWKmWCh1AHAqxEAAYASAAEgJwvvD_BwE 無料(送料のみ)とのことで、この本を読んでみました。 ちょっとした内容や感じたことなどを紹介しようと思います。 …。 松岡氏は、当時のロシア、中国(当時はまだ中国大陸に正当な政府は存在せず、軍閥が割拠する状態)との外交について、前任の幣原外相による譲歩を重ねる外交により、 ロシアには海洋権益を脅かされ、中国大陸での通商の妨害を招いていると指弾しています。 国際的にも正当な権利の下で得た権益・通商活動であり、それを脅かされるとは何事か! というわけですね。 これだけ聞くと、 「松岡氏って強硬な考え方だなぁ」 と感じる人もいるかもしれません。 しかし、その指弾と同時に、 「私は日露国交断絶論者でも、不当にロシアに向かって強硬論を吐くものではない」 、さらに中国の妨害に対して軍を出動させたことについて、 「腕力は外交ではない」 とまで書き記し、軍が出動して外交がなくなってしまった現状を嘆いてさえいます。 強硬論者というイメージが変わりませんか? さらに、満州地域についても興味深い記述が出てきます。 まずはその地域に住む朝鮮人について。 彼らは中国人(漢民族)から差別されており、日本人と同様、それ以上にその活動を妨害されている。 それに対して朝鮮人は暴動を起こした。その行動は決して許されることではないとした上で、なんとそれには 同情を禁じ得ない 、としています。...

陰謀論が放つ不思議な魅力~思考を止めるきっかけになっていませんか?~

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隔月刊誌「 表現者クライテリオン 」の編集委員を務める 川端祐一郎 氏が、興味深い記事を寄稿されていたので、ご紹介! 【陰謀論に取り憑かれる人々】 https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20191113/ 2016年に行われたイギリスの「ブレグジット」に関する国民投票や、トランプ氏が当選したアメリカ大統領選挙において、SNSなどオンラインでの宣伝合戦が大きな役割を果たしたのではないかという議論があります。 特に有名なのは、「ケンブリッジ・アナリティカ」というイギリスのコンサル会社が、フェイスブックなどから取得した数千万人分にものぼる個人データを用いて分析モデルを構築し、これがブレグジット推進派やトランプ陣営の選挙作戦に投入されたという話です。米大統領戦では、トランプ陣営が同社の分析に基づいてターゲットを定め、ヒラリー陣営の100倍の費用をかけてフェイスブック広告を展開したらしい。 このケンブリッジ・アナリティカ社については、 「フェイスブックなどの個人データを違法に利用したのではないか」 「ヒラリー・クリントンを中傷する虚偽広告の流布に関わったのではないか」 「ロシア当局による選挙への介入をサポートしたのではないか」 といったいくつもの疑惑が指摘されていて、同社は法的・倫理的な責任が問われる中、2018年に破産しました。 最近、ケンブリッジ・アナリティカ社で選挙戦に携わった後、不正行為の内部告発を行った元幹部やエンジニアらに密着した『The Great Hack』というドキュメンタリー映画を見ました。当事者本人たちがインタビューに答えているので、どんな経緯や戦略で選挙戦に臨んだのかがよく分かって興味深いですし、恐らく同社が法的・倫理的に問題のある行為を行っていたのは本当なのでしょう。「ビッグデータ」「洗練された解析技術」「虚偽情報」の組み合わせによる世論操作が、民主主義を危機に陥れるという問題提起も重要だと思います。 ただ、この映画を観ていて違和感も覚えました。オンラインでの宣伝合戦の裏には「ダーク・ワールド」(闇の世界)が広がっていると言ったり、フェイスブックのような巨大企業を「デジタル・ギャングスター」(デジタルやくざ)と呼んだりしていて、これらが民主主義に対する深刻な...