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鈴木憲和農林水産大臣「米価はマーケットが決めるもの」──増産撤回の真意は“農家の所得を守る”こと 表面的な「放任発言」ではなく、現場を守る冷静な判断

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■ 鈴木憲和農水相の「米価はマーケットが決める」発言とは 2025年秋、鈴木憲和農林水産大臣が記者会見で語った 「米価はマーケットが決めるもの」 という言葉が話題になりました。   一見すると、「政府は米価に口を出さない」「農家を突き放した」ように聞こえるこの発言。 しかしその背景には、 むしろ農家の所得を守るための冷静な現実認識 があります。 鈴木大臣が同時に打ち出した「増産方針の撤回」も、同じ文脈で理解する必要があります。 つまり、「作れば作るほど米価が下がる」という悪循環を避け、 農家の経営を守る方向への転換 なのです。 ■ なぜ「増産方針」を撤回したのか 長年、日本の米市場は需要と供給のバランスが崩れがちでした。 国内の米消費量は1960年代の半分以下に減少。 それにもかかわらず、各地で「増産」を進めれば、当然ながら供給過剰となり、価格が崩れます。 米価が下がれば、農家の所得は直撃を受けます。 鈴木憲和大臣の判断は、まさにこの現実を踏まえた「農家を守るための増産撤回」なのです。 「増やせば喜ばれる時代」から、 「守るためにあえて抑える時代」へ。   これは単なる方針変更ではなく、 農政の発想転換 にほかなりません。 ■ 「マーケットが決める」というのは“放任”ではない 「マーケットが決める」と言うと、「市場に丸投げ」と誤解されがちですが、 鈴木大臣の真意はそうではありません。 彼が重視しているのは、 価格の操作ではなく、所得の安定 です。 市場原理を尊重しつつ、価格下落時に農家を守るための支援を整える。 つまり、「価格は市場が決めるが、所得は政府が守る」――これが鈴木大臣の一貫した考え方です。 ■ 農家の所得を守るには、「価格保証」か「所得補償」しかない 日本農業が直面する最大の課題は、 価格変動のリスクをどう吸収するか です。 米価を上げることは難しくても、 所得を安定させる政策 を整えれば、農家は安心して生産に取り組めます。 そのための手段が次の二つです。 ▪ 農家戸別所得補償制度 販売価格と生産コストの差額を政府が補填する仕組み。 民主党政権下で導入され、農家の安定に一定の成果を上げました。 ▪ 米価差額補填・価格保証政策 市場価格が一定水準を下回った場合に国が差額を補てんする制度。 欧米諸国では一般的で、...

日本の米価は「高い」のではない──デフレ前の水準に戻っただけ 農業再生に必要なのは「農家戸別所得補償」か「価格保証政策」だ

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■ 「米が高い」という誤解 最近、SNSやニュースのコメント欄で「米が高くなった」「庶民の食卓を直撃している」といった声をよく見かけます。 しかし実際のところ、 現在の米価は決して“異常に高い”わけではありません。 むしろ、 長く続いたデフレによって不自然に低く抑えられていた価格が、ようやく本来の水準に戻った と見るべきなのです。 農林水産省の統計によれば、2024年産の主食用米の価格は60kgあたり13,000〜15,000円前後。 これは、 1990年代の水準とほぼ同程度 です。つまり、名目価格では「高い」と感じても、物価全体の上昇や円安を考慮すれば、 実質的にはむしろ安い部類 なのです。 ■ デフレ時代の“安すぎた米価”がもたらした弊害 デフレ期の日本では、消費者の購買力が伸びず、農産物価格も下落を続けました。 その結果、農家の経営は苦しくなり、 後継者不足・耕作放棄地の増加・集約化の遅れ など、構造的な問題が深刻化しました。 つまり、「安い米」は消費者にとって一時的にはありがたくても、 長期的には農業そのものを衰退させる要因 となっていたのです。 ■ 農業再生のカギは「価格とコストの差」を埋めること 農家の努力だけで価格競争に勝つことは、もはや不可能です。 海外の大規模農業や補助金政策に対抗するには、 日本政府が市場と生産コストのギャップを埋める仕組みを整える 必要があります。 その代表的な政策が以下の二つです。 ① 農家戸別所得補償制度 民主党政権時代に導入された制度で、 販売価格と生産コストの差額を農家に直接補填 する仕組みでした。 「バラマキ」と批判されがちでしたが、実際には 中小農家の経営安定を支え、離農防止に一定の効果を上げた と評価されています。 ② 価格保証・所得補償制度(複合モデル) 欧米では一般的な制度で、 市場価格が一定水準を下回った場合に国が差額を補てん します。 これにより、農家は安定的な経営が可能となり、国民も安定した価格で食料を確保できます。 つまり、「自由市場に任せればよい」という発想では、 食料安全保障も地域経済も守れない という現実があるのです。 ■ 米価を「適正化」することは国益である 食料は単なる商品ではなく、 国家の安全保障インフラ です。 日本の農業を守るということは、 輸入依存に偏らない食料供給体制を...

これからもウマい飯を食うには、農家を公務員にするしかないよね、というお話。

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田んぼの水面や畑が朝日が照らされ始める頃、農家の一日の仕事が始まります。代々受け継がれてきた畑や田んぼ、そこで育つ野菜や米。毎日汗をかき、季節の移ろいに合わせながら食べ物を育てるその姿は、私たちの食卓の安心そのものです。 しかし現実は厳しいです。天候不順や輸入農産物との価格競争、後継者不足……農家の生活は常に不安定です。にもかかわらず、長年政権を握る自民党は、農家を本気で守る姿勢を示してきたとは言えませんね。 自民党政治の怠慢が生む不安 自民党は選挙のたびに農村を回り、「農業を守る」と口にします。しかし実際に行動してきたのは、輸入自由化や補助金削減など、農家の負担を増やす政策です。結果として、農家の生活はますます厳しくなり、若い世代は農業から離れていきます。所得が伸びる見込みがない業界に若者が寄り付くはずがないのです。 農家が苦しむ一方で、政府の政策は「財政規律」や「数字の上での効率」を優先。目の前で必死に働く農家の生活より、帳簿上の数字が優先される──そんな政治が続いているのです。 戸別補償制度の必要性 ここで重要になるのが、 農家戸別補償制度 です。農家一戸一戸に最低限の収入を保障することで、天候や市場の波に翻弄されず、安心して農業に取り組むことができます。 補償があれば、田んぼを守るお父さん、畑を整えるお母さん、農業を学ぶ若者たちも、将来に希望を持って農業に打ち込めます。農家の生活を守ることは、国民全体の食の安全を守ることにもつながります。 農家を“公務員化”するという発想 さらに議論されているのが、農家を公務員化する構想です。農家は私たちの食卓を支える“公共の仕事”を担っています。安全な食料を届け、耕作地を守り、地域社会を支える──これらはまさに国を支えるインフラの一部です。 公務員として安定した給与や保障を受けられれば、農家は安心して仕事に打ち込めます。若い世代も希望を持って農業に飛び込めます。ところが自民党の政治は、こうした制度の議論を後回しにしてきました。農家の不安を放置し、票田としての利用にとどめているのです。 農家にとってもっとも必要な、彼らの所得水準を守る(※減反政策以外で)、ことには全くと言っていいほど手を付けていないのです。 人間に寄り添う政治が必要 農家の方々に話を聞くと、いつも出てくる言葉は「作物を育てるのは好き。でも生活が不安だ」という...