秋山真之に学ぶ「情報収集」の重要性|日本海海戦を支えた参謀の仕事術
「情報を集めることが大切だ」
仕事をしていると、こんな言葉を耳にすることがある。
しかし、情報を集めれば、それだけで良い判断ができるわけではない。
インターネットを開けば大量の情報が手に入る。
ニュースサイト、SNS、動画、書籍、専門家の解説。
情報が少なかった時代とは比較にならないほど、私たちは多くの情報に囲まれている。
それでも、
「何を信じればいいのか分からない」
「情報を集めすぎて、かえって判断できなくなった」
ということが起こる。
この問題を考えるとき、興味深い人物がいる。
日露戦争で連合艦隊の作戦参謀を務めた秋山真之である。
秋山真之は、日本海海戦で日本海軍の作戦立案に携わった人物として知られている。
国立国会図書館によれば、秋山は米国留学や米西戦争の観戦、米国海軍での実地研修を経験し、帰国後には海軍大学校で戦略・戦術・戦務などを講義していた。
では、秋山真之から現代の会社員は何を学べるのだろうか。
私は、「情報を集めること」ではなく、「情報を判断に変えること」だと考えている。
秋山真之は「情報」をどう扱ったのか
秋山真之を語るとき、日本海海戦の作戦ばかりが注目される。
しかし、その背景には、長年にわたって軍事について学び、海外で実地に戦争を観察した経験があった。
秋山は1896年に米国へ留学し、米西戦争を観戦している。
単に本を読んで知識を得るだけではなく、実際の戦争を自分の目で見る機会を得たわけだ。
さらに帰国後は海軍大学校の教官となり、戦略や戦術などを教えている。
つまり、
情報を得る
↓
現実を観察する
↓
知識を整理する
↓
戦略・戦術として考える
という経験を積み重ねていたと見ることができる。
ここに、現代の仕事にも通じるポイントがある。
情報収集は「集めること」が目的ではない
現代では情報を集めること自体は難しくない。
Googleで検索すれば、多くの情報が出てくる。
SNSを見れば、専門家の意見も見つかる。
動画を検索すれば、誰かが分かりやすく説明してくれている。
しかし、情報が増えるほど判断が簡単になるとは限らない。
むしろ逆の場合もある。
例えば、会社で新しい仕事を任されたとする。
そこで関連資料を10個集める。
さらにインターネットで検索する。
過去の事例を調べる。
他の人の意見も聞く。
気が付けば大量の情報を集めている。
ところが、
「結局、何をすればいいのか?」
が分からない。
これは情報収集の目的が変わってしまっているからだ。
情報収集の目的は、情報を増やすことではない。
判断するために必要な情報を手に入れることだ。
「知っている」と「使える」は違う
秋山真之の経歴を見ると、海外での経験や軍事研究を、その後の仕事に結び付けていたことが分かる。
米国留学。
米西戦争の観戦。
米国海軍での研修。
そして帰国後の教育活動。
これらを単なる「経験」で終わらせず、軍事理論として整理していった。
これは会社員にも当てはまる。
例えば資格を取得したとする。
資格の知識を覚えただけでは、仕事の成果には直結しない。
重要なのは、
「この知識を自分の仕事でどう使えるか」
を考えることだ。
情報も同じである。
知識を持っていることと、知識を使って判断できることは別物だ。
一次情報を見る習慣を持つ
情報収集で大切なのは、情報源だ。
誰かが書いた記事を読むだけではなく、可能なら元となる資料を確認したい。
これは歴史を調べる場合にも同じことが言える。
秋山真之についても、現在は国立国会図書館やアジア歴史資料センター、防衛研究所などから関連資料をたどることができる。
例えば防衛研究所には、日本海海戦の戦闘詳報や関連電報、秋山真之の自筆の手紙などの史料が残されている。
もちろん、すべての人が歴史研究者のように一次史料を読む必要はない。
しかし、
「この情報は誰が発信しているのか」
「元になった資料は何なのか」
を意識するだけでも、情報の見方は変わる。
情報は「反対側」も見る
もう一つ重要なのが、都合のいい情報だけを集めないことだ。
自分が、
「この会社は絶対に成長する」
と思っているとする。
そこで、その会社に関する肯定的な情報ばかり探してしまう。
これは投資だけではない。
仕事でも同じだ。
「この企画は成功する」
と思えば、成功する理由ばかり探してしまう。
しかし、本当に必要なのは、
「この企画が失敗するとしたら、何が原因になるのか」
という情報かもしれない。
情報収集では、
自分の考えを補強する情報
だけではなく、
自分の考えを否定する情報
も探したい。
これは意思決定の質を高めるうえで重要な姿勢だ。
秋山真之から学べる「現場を見る」こと
秋山は米国留学中に米西戦争を観戦している。
現場を見るという経験は、現在でも重要だ。
会社の資料だけを読んでいると、顧客の本当の姿が分からない。
売上データだけを見ていると、なぜ商品が売れたのか分からない。
社内資料だけを見ていると、現場で何が起きているのか分からない。
数字や資料は重要だ。
しかし、それだけでは分からないこともある。
だからこそ、
データを見る。
そして、
現場を見る。
この両方を意識したい。
情報収集で大切なのは「捨てる」こと
情報収集というと、たくさんの情報を集めることだと思われがちだ。
しかし、本当に難しいのは情報を捨てることかもしれない。
10個の情報を集めたとしても、そのすべてが意思決定に必要とは限らない。
むしろ重要な情報とそうでない情報を分けなければ、判断が遅くなる。
会社員の仕事でも、
「この資料は本当に必要なのか」
「この数字は意思決定に影響するのか」
「この情報は最新なのか」
と考えるだけで、仕事の進め方は変わる。
情報を集める能力だけではなく、情報を選別する能力が必要なのだ。
情報収集から意思決定までを一つにつなげる
ここまでを整理すると、情報収集には大きく5つの段階がある。
① 何を判断するのか決める
まず目的を明確にする。
② 必要な情報を集める
目的に関係する情報を集める。
③ 情報源を確認する
誰が発信した情報なのかを確認する。
④ 反対意見も調べる
自分に都合の悪い情報も確認する。
⑤ 最後は自分で判断する
情報を集め続けるのではなく、判断する。
この最後が重要だ。
情報が100%揃うことはない。
不確実な状況でも、どこかで決断しなければならない。
それが意思決定である。
現代の会社員にも「参謀」は必要だ
秋山真之は、司令官を支える参謀だった。
自分自身が最終決定者ではない。
しかし、司令官が判断するために必要な材料を整理し、作戦を考える。
この役割は、現代の会社組織にも存在する。
上司に報告する。
経営者に提案する。
プロジェクトの問題点を整理する。
市場調査をする。
競合企業を分析する。
これらはすべて、広い意味では「参謀」の仕事だ。
だから、会社員としてキャリアを考えるとき、
「自分が目立つこと」
だけではなく、
「意思決定する人に、質の高い情報を渡せる人になる」
という方向も面白いと思う。
まとめ――情報を集める人ではなく、情報を使える人になる
秋山真之の生涯を見ると、海外留学、戦争の観察、軍事研究、教育、そして実戦での作戦立案という経験が積み重なっている。
彼から学びたいのは、単純な「情報収集術」ではない。
情報を集め、整理し、比較し、判断につなげる姿勢である。
現代は情報不足の時代ではない。
むしろ、情報が多すぎる時代だ。
だからこそ、
「何を調べるか」
「どの情報を信じるか」
「何を捨てるか」
「いつ判断するか」
が重要になる。
仕事でも、投資でも、人生でも同じだ。
情報をたくさん持っている人が、必ずしも良い判断をするわけではない。
必要な情報を見極め、それを判断につなげられる人が強い。
秋山真之という人物を知ることは、明治時代の軍事史を学ぶだけではない。
情報過多の現代を生きる私たちにとっても、考える材料を与えてくれる人物だと思う。
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