「持ち合い株式」が失われる…~日本独自の「お付き合い」意識が消えゆく時代に~





日本企業の独特の仕組みである「持ち合い株式」が、


徐々に失われつつあるようです。



<27兆円の行方>(上)持ち合い株、見えぬ意義「物言わぬ株主」保有効果示さず 金融庁開示強化で売却本格化も…
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190906&c=DM1&ng=DGKKZO4944422005092019DTA000

企業が保有する政策保有(持ち合い)株への注目が高まっている。金融庁などの統治指針で解消を促され、開示も強化されたことで、売却の動きが本格化し始めた。それでも依然として日本株全体の約5%にあたる約27兆円が残る。各企業の持ち合い株を読み解くと、関係性や保有の意義が外からは分からないものが多い。

8月28日に4000億円規模の政策保有株を売り出すと発表したリクルートホールディングス。手放すのは凸版印刷や大日本印刷、電通、メガバンクなど13社だ。

持ちつ持たれつ

最大の売却元である凸版は持ち合い株が多いことで知られる。2019年3月末時点で総資産の3割以上を株式が占め、205社の上場株を保有。開示されているだけで43社と持ち合い関係にある。「保有目的や意義が薄れた銘柄は売却していく」(黒部隆取締役執行役員)としているが、リクルート株の一部を手放す一方、19年3月期だけで16社の株式を買い増している。

大日印も204社の上場株を保有する。それぞれの保有株を整理すると、持ちつ持たれつの複雑な相関図ができあがる。フジ・メディア・ホールディングスやTBSホールディングスといった民放、久光製薬や大正製薬ホールディングスといった製薬、東レや信越化学工業といった化学などが絡み合い、外部からはどのような関係にあるのかわからない。

持ち合いの削減を促すため、金融庁は今年から情報開示を厳しくした。19年3月期の有価証券報告書から、個別銘柄の開示数を2倍の60社に増やし、それぞれに持ち合い関係の有無のほか、各銘柄の保有理由と定量的な効果について記載するように求めた。

ただ各社の有報には保有する理由を「営業政策等の取引関係の維持と強化」(凸版)、「営業取引の関係強化」(大日印)、「企業価値向上のための事業関係及び取引関係の維持強化」(日清食品ホールディングス)など、すべての銘柄に同じ記載をするなど、お互いにどのような取引があるのかすらわからない開示がほとんどだ。

「記載は難しい」

保有の定量的な効果は「定量的な保有効果の記載は実務上困難」(日清食HD)、「相手先との関係を考慮し開示を差し控える」(王子ホールディングス)、「取引先との営業秘密との判断」(大正薬HD)との理由で記載すらしていない。

富士フイルムホールディングスは保有先各社からの受取配当金を記載するが、「資本コスト等に見合っているかを検証し、経済合理性を検証している」としているだけだ。「(このような開示では)どういう基準で評価をしているかわからず、一般的で漠然としている」(アセットマネジメントOneインターナショナルのカリン・リー氏)と、投資家が保有している意義を判断できる材料にはなっていない。

持ち合い株式は1960年代ごろから始まった日本特有の仕組みだ。銀行や生命保険会社が関係維持を名目に相互に株式を持ち始め、事業会社の間でも取引先持ち株会などの名称で広がった。

持ち合いの一番の問題点はお互いが「物言わぬ株主」となることで、株主総会の決議が形骸化することだ。

日本市場が開放された際には、外国資本からの「買収防衛策」の一環として、持ち合いを始めたり、増やしたりすることも多かった。TBSHDは他社の政策保有株が議決権に占める割合が少なくとも3割あり、日清食HDも2割以上ある。共通するのは2000年代後半にアクティビストに株を持たれたり、他社から買収提案を受けたりしたという点だ。

目的や効果など情報開示強化の目的は持ち合いによる「見えない関係」を可視化し、投資家に必然性を判断させることにある。その情報開示が骨抜きにされれば、「持ち合い株式は株主の権利を阻害している」(国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク最高責任者のケリー・ワリング氏)との批判はやむことがない。



…。


この持ち合い株式は、記事にもある通り


取引先との長期的な関係を大切にするためのものなど、


日本企業の特徴をよく表していると思います。


いわゆる「お付き合いの文化」、ですね。


記事では、「持ち合い株式は株主の権利を阻害している」


批判的な視点を強調して紹介されていますが、


確かに弊害もあるのでしょう。


しかし、同様にお付き合いによる良い部分もあるはずです。


だからこそ、1960年代から今もその仕組みが残っているんです。


平成の30年間は、


こうした日本独自の仕組みが経済停滞を招いたとして、


「構造改革」の名の下、どんどん破壊されていきました。


それで、我々は豊かになりましたか?


その30年間の経済成長率を見れば、答えは明らかです。


海外(特にアメリカ)からの声に惑わされるのではなく、


もっと、先人たちが残してくれた日本独自の仕組みを大切にしませんか?



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