中野剛志さんのルーツと心構え~フリードリヒ・リストから学ぶ「忠国心」とは?
経済産業省の官僚で評論家の 中野剛志 さんが、 新刊 「経済と国民――フリードリヒ・リストに学ぶ」 に添えて、 ご自身のルーツと心構えについて書いた、 「リストの闘争とわたし」 と題する寄稿文を 「AREAdot.」 に公開しました。 その内容をまとめて、感じたことを書こうと思います。 中野さんは20代の頃、 ドイツの政治経済学者、フリードリヒ・リストの著作 「政治経済学の国民的体系」 を読み、 その後の人生を決定づけられたそうです。 その本には、経済自由主義でもマルクス主義でもなく、 現実の世界を反映した、より実践的な理論 「経済ナショナリズム」 が あったことに加えて、 リスト自身の生涯に強い衝撃を覚えたことが理由 です。 リストは経済ナショナリズムの視点から、 経済自由主義に基づく自由貿易を批判した人物。 ただ、その先見の明と、後のドイツの経済発展への多大な貢献にも関わらず、 経済自由主義が主流を占める時代にあって、 その批判は、同じドイツ国民から誹謗中傷を受けることになりました。 結局彼は、それに耐えかねて自殺…。 その最期を知り、当時の中野さんは (経済ナショナリズムの道を進み、有効な理論と一貫した実践を目指すことで) 「リストのように、誤解や誹謗中傷にさらされながら、不当に低く評価された生涯を是非とも送りたいものだと夢想した」 そうです。 そして、実際にTPPを筆頭に、自由貿易、グローバル資本主義などを痛烈に批判。 幸か不幸か「夢想」は叶い、 リストが闘争を挑んだ敵の強大さや、何が自殺に追い込んだかが分かってきました。 常人であれば、この状況に屈するでしょうが、 中野さんは違いました。 なぜなら、 あえて闘争に身を投じたリストと、同じ心構えでいるからです。 その心構えとは…。 リストは、自らを執筆に突き動かすのは、 「自らの本が、発言が、知識が、祖国ドイツの発展に役立つ可能性があること」 とした上で、 本で批判した考え方は、祖国にとって有害だと考え、 それに対処する最善の策は、 「全力でもってそれを非難することだ」 と考えたからです。