食料安全保障を国の根幹に置く 後編~若者の就農希望者が緊縮財政に振り回される~




前回、「食料安全保障を国の根幹に置く 前編」https://eskunsf.blogspot.com/2019/08/blog-post_28.html


の中で、国民民主党代表・玉木雄一郎氏が


農政について実に真っ当な議論をしていることを紹介しました。


本記事では、その一方で現在の農政の体たらくの一例を紹介します。



「就農支援 交付できぬ 予算減額で自治体混乱」
https://www.agrinews.co.jp/p48454.html

 新規就農者を支援する国の「農業次世代人材投資事業」の2019年度予算の減額で、地方自治体が対応に苦慮している。経営開始型の新規採択を予定する新規就農者に対し交付をいまだ決定できない自治体や、全額交付の確約がないまま半額分の上期支払いを決定した自治体もある。現場の混乱に、農水省は「必要性が高い人に優先的に配分してほしい」とする。

追加配分 要望相次ぐ
 同事業は12年度に前身の就農給付金事業から始まり、就農前の研修期間に最大150万円を2年間交付する準備型と、定着に向け最長5年間同額を交付する経営開始型の2本立てで構成する。19年度からは年齢を原則45歳未満から50歳未満に引き上げ、対象を拡大したにもかかわらず、予算は154億7000万円で、18年度の175億3400万円に比べて12%、20億円以上減額した。

 事業の減額で、要望額を大きく下回る配分額を同省から提示された自治体が続出。支援を営農計画に織り込んで生計を立てている新規就農者もいるだけに、波紋が広がっている。

 佐賀県では、同省の配布額では現時点で5000万円足りない。市町村に対し、国からの配布額が減額したことを説明した上で、営農意欲など事業の要件を満たした交付希望者全員に上期分(最大75万円)の支払いを決定した。

 残りの下期分は国から支払われるか不透明だが、同県は「経営開始型の5年間の交付は農家との約束だ」として、影響を最小限にとどめるために上期分は例年通りの時期に決定したという。同県は「万が一、国からの予算がこのまま大きく足りない状況だと、半額しかもらえない若者が出てきてしまう。そうならないよう、農水省に強くお願いする」と強調する。

 岡山県も交付希望者全員に上期分(最大75万円)の支払いを決定した。残る半額は同省の追加配分を待つという。岐阜県では経営開始型の新規採択予定者の交付はストップしている状況だ。多くの自治体から、予定していたのに交付されない新規就農者が出ることがないよう、追加配分に向けて強い要望が同省に相次ぐ。

調整では限界 国は対応検討
 同省は、都道府県の要望額や前年度実績などを踏まえ、配分額を決定する。例年、予定していた新規就農者が病気で交付申請をやめるなどして当初の見積もりを下回り、配分額から返却する自治体がある。同省では毎年11月に予算の執行調査を行い、返却分から足りない自治体に追加配分するなどしてきた。19年度はこうした自治体間の調整は小まめに行う方針だという。

 ただ、19年度は前年度比20億円以上もの減額で、大半の自治体で配布額が要望額に満たず、調整だけでは限界がある。同省は「現場の苦慮する声は聞いている。予算の執行状況を丁寧に調査し、どう対応できるか考えていく」と説明している。

就農支援減額に不満の声 頼みの綱…「死活問題」 
 山間部に30戸が暮らす佐賀市三瀬村の井手野集落。5年前に大阪からUターンした庄島英史さん(44)は、ピーマンを栽培する。あぜ道が多く耕地面積を上回る古里で農業をする厳しさは、稲作農家の両親の経営を見て痛感していた。それでも「会社員生活でいろいろな地を訪れたが、古里以上の場所はない」と就農した。

 今年は経営開始型交付の最終年に当たる5年目。これまで綿密な営農計画を提出し、給付金はトラクターや運搬車、パソコンの購入費用に活用してきた。規模拡大や効率化に限界がある農地だったが、同事業が大きな支えになった。庄島さんは「支援がないと農業を続けるのは厳しかったかもしれない」と振り返る。来年度から経営を自立できる見通しだが、それも経営が安定しない初期段階に同事業の補助金を受給できたからだという。

 古里に仲間を呼び込みたいと考え、同事業をPRし、若者に就農を勧めてきた庄島さん。「この事業を頼りにする後輩もいる。打ち切りになればあまりに影響が大きい」と訴える。

 庄島さんの後輩で、同集落に移住し、無農薬で少量多品目を栽培する佐藤剛さん(35)は、今年度の受給が不透明な現状に困惑する。同事業があるから、無農薬栽培や新たな生産方法などにチャレンジできていたという。「非常に貴重で頼りにしていた支援。農家出身ではなく、基盤がない移住者なので、事業の減額は死活問題だ」と主張する。

 同市で経営開始型の補助を受けるのは、庄島さん、佐藤さんを含めて48人。これまで1年間まとめて県から市に予算が振り込まれてきたが、今年は予算が足りないとの理由で上期分だけだった。市は「急に『支払えない』とは、現場で頑張る新規就農者に言えない。非常に大きな問題だ」と憤る。JAや県と新規就農者の呼び込みに力を入れてきた同市。同事業も就農を呼び掛ける材料の一つにしてきたが、今後はこの事業についてどう説明すればいいのか途方に暮れているという。

自治体も困惑「説明できぬ」「寝耳に水」「信頼揺らぐ」市が補正予算
 現状、経営開始型の新規採択者には給付金を支払っていない岐阜県。同県飛騨市では、トマトで就農を目指す3人への給付が不透明なままだ。このため市は緊急の対応として補正予算を組んだ。全額国費の同事業に、自治体が補正予算で対応するのは異例だ。都竹淳也市長は「制度としての信頼が揺らぐ深刻な問題。新規採択予定者の不安な状況を避けるために、緊急避難的な対応としてやむを得ず補正予算を組んだ」と説明する。

 都竹市長が事態を知ったのは5月。会議で他の自治体首長から問題提起があったという。現場の混乱が想定される大きな予算の減額に国から説明がなく、「寝耳に水。情報伝達の面でも大きな問題だ」と語気を強める。

 他の自治体からも「年齢を引き上げ、対象を拡大したのに予算を減らすのはおかしい。追加配分してほしい」「受給できる前提で営農計画を組んでいる若者に説明できない」との声が相次ぐ。「農業の産地ではなく、国の予算が少ないからという理由で補正予算を求めても財政部門や議会が納得してくれない」と話す市の担当者もいる。

 同事業は17年度までの6年間で準備型8916人、経営開始型1万8235人が受給し、新規就農者の育成に大きく貢献してきた。新規就農者や自治体が同事業の必要性を訴える一方、同事業には2017年秋の行政改革推進会議などでは厳しい指摘があり、財務省からは緊縮財政の中で予算削減を求められている。

 農水省は新規就農者の苦慮する状況について「どういう対応ができるかを検討している」と説明している。



…。


緊縮財政の悪影響がここにも表れています。


現政権は、「稼げる農業を目指す」などと言いますが、


それ自体は、「国民を食わせる農業」と両立するのであれば、


目指すことは構わないと思います。


しかし、本気で目指すのあればせめて予算を潤沢に回すべきでしょう。


「稼げる農業にしましょう!でも、自分たちで何とかしてね」


こんな考え方は決して許されません。


また、今回の予算減額により影響を受けているのは、


若手の新規就農者とのこと。


あれ…?農業の担い手不足を解消するんじゃなかったの?


「経営が安定しない初期段階を国が支えてくれるのならば…」


と就農を決めた方々が今、どれほど不安であることか…。


国の根幹に置くべき農業・農政を、緊縮財政で蔑ろにする。


現政権は保守でもなんでもありませんね…。


これでもなお、農業関係者は自民党を支持しますか?


前回の記事では、玉木氏が農政を野党連携の起爆剤にする意向を示している、


と書きました。


野党がまとまることができれば、次の選挙は面白いかもしれません。



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食料安全保障を国の根幹に置く 前編~日本の農業が世界一保護されていないことを知らない人へ~




国民民主党の玉木雄一郎代表が、


農業協同組合新聞のインタビューに答えています。



食料安保を根幹に【国民民主党・玉木雄一郎代表】
https://www.jacom.or.jp/nousei/rensai/2019/08/190821-38917.php

国民民主党は党首の玉木雄一郎代表がこのシリーズのインタビューに応じた。8月20日、立憲民主党と衆参で統一会派を組むことで合意したが、玉木代表は「野党再編の起爆剤、接着剤の1つは農政」と強調し野党で農政を議論する場を検討したいと話した。
玉木雄一郎氏

 --参院選では農業の現場で何を感じましたか。

 今の安倍農政に対する不満と不信が根強くあることです。どうしても産業型、大規模型を追求するので、いわゆる地域政策としての農政が不十分で、中山間地域は非常に不安を感じていました。
 米政策については、米の直接支払い交付金がなくなり生産調整もなくなって、今年は果たして米価が維持できるのかという不安が、米どころを中心に非常に広がっていると感じました。安心して営農継続できる所得補償の仕組みが必要だということではないでしょうか。
 要は何でもかんでも市場原理だけではうまくいかないというのが農業、農政の実態です。産業政策に偏ったいまの農政を、地域政策とバランスがとれたものに変えていく必要があります。
 一方で、野党がばらばらになっているので、とにかくまとまってくれ、という声もありました。私は野党を再編していく起爆剤、接着剤の1つは農政だと考えています。地方の多くの農業従事者が感じている農政への不安、それに対する答えをしっかり提示してまとまることが、野党が浮上していくきっかけになると思っています。


◆野党間で農政議論


 --野党で農政について議論、検討を続けるお考えはありませんか。

 先日、衆参で統一会派を組むことで立憲民主党と合意しましたが、立憲民主党も力を合わせるところは合わせようと変わってきたと思います。まず農政で野党で一緒になって検討、議論する場をつくりたいですね。その際、戸別所得補償制度はわれわれのひとつの考えですが、時代に合わせてバージョンアップしていく必要があります。
 1つは地域別に単価を柔軟に変えたほうがいいのではないかということです。生産コストは地域によって違うので、たとえば農政局単位で単価を変えてもいいでしょう。もう1つはヨーロッパでも進んでいる環境加算のような仕組みです。低農薬、無農薬など、食の安全に配慮したかたちで農産物を作る。あるいは動物福祉に配慮して農畜産物を作るという取り組みをしたら加算措置を講じる。それからGAPを広げ、輸出につなげていくためにもGAP加算といったことも主張しています。このような加算措置を導入してバージョンアップした戸別所得補償制度を次の衆議院選挙で問いたいと思います。


◆国のかたち問うべき


 --基本計画の見直しについてはどう考えますか。

 問題なのは、正式な諮問も受けずに関係者からのヒアリングなどをすでにやっているという点です。通常であれば1年ぐらい前に正式に諮問して、部会などでヒアリングをして決めていくということですが、現時点で正式な諮問をしていません。こういう中で政府に都合のいいデータだけを集めているのではないかという疑いもある。だから、まず官邸農政の修正を図らないといけない。とにかく結論ありきで官邸が何か決めて、その方向に強引に持っていくような農政では現場と完全に乖離します。もう一度、現場の声を聞くということが大事です。
 一番大事なのは食料安全保障を、もう一度きちんと国の根幹に置くことです。結局、今の農政は産業型農政一本ですから、工業製品と同じような扱いにしかなっていないわけです。しかし、他の製品やサービスと違い、農業や農地には多面的機能があります。市場原理では測れない価値があるということに重きを置かないと、農政の重要な方向性を見誤ってしまう。そのため食料安全保障を国の根幹に置くべきであって、自国民が自国内で作る農産物で自国民を一定程度賄う、という大きな国としての基本方針がないと、自給率は下がる一方です。実際、生産基盤がどんどん弱っています。とくに農地と担い手、これがどんどん細っている。生産量が減ることによって価格が上がり、みかけの生産額は増えていますが、その裏で進行している生産基盤の弱体化は予想以上に悪化し、食料安全保障の観点から非常に問題です。
 私の持論は、改憲議論は9条よりも食料安全保障を憲法に書きこむような骨太の議論をすべきだということです。これはスイスが憲法に導入していますが、条文を読むと人口の一極集中を防ぐためにも農業や食料安全保障が大事だと書いてあります。
 今、日本で起こっている問題はまさに一極集中、人口減少、高齢化です。一次産業がある程度、全国津々浦々で元気であること、その前提としてある程度国内で自給をするんだという食料安保の柱がないと、どんな基本計画も絵に描いた餅になってしまいます。だから国家の政策として語るべきは、まず食料安全保障です。
 私は農業は国防だとも言っています。地方にも人が住んでいるから攻められないわけで、誰も住まない土地になれば外国人が購入するなど、それこそ国の根幹が揺らぐことになる。これは国のかたちの問題です。
 国のかたちとして都会だけではなくて地方もある程度、豊かさと活力を持って維持するためにはどうするのか。そのためにはやはり農業が必要です。とにかくお金を出して海外から買えばいいというところから抜け出して、きちんとした生産基盤が国内に維持されている、そこで雇用が生み出される、農業所得が確保される、こういう基本的な絵姿を国民全員で共有しなければなりません。そういう議論を農林水産省を中心にしっかりとやるべきです。


◆密約ないかしっかり注視


 --日米交渉がヤマ場を迎えています。

 政府は過去の経済連携協定が譲歩の上限だと言っていますが、そもそもTPP協定が過去の経済連携協定のなかに入るのかどうか、確定していません。トランプさんはTPPから離脱するといって大統領になっているわけだから、TPPを気にするわけがない。6月の日米首脳会談でも8月になったら大きな数字が出てくるとトランプ大統領が発言している。結局、選挙の前には国民に伏せておいて、選挙が終わったら、農産物、とくに牛肉の分野で大幅に譲歩する密約がありうる。ここは相当注視しなければならない。
 もし日米間で大幅な譲歩があり、それを隠したまま参議院選挙をしたとするなら、けしからん話です。この問題は、閉会中審査として予算委員会の開催を求めるとともに、国会を早く開いて交渉内容を明らかにしろと求め続けるしかありません。


◆「農協改革」の改革を


 --JAグループの改革への取り組みについてどう思いますか。

 JAグループは官邸主導の押し付け改革に振り回されるな、と言いたいです。これまで総合農協として地域に根ざして地域の社会インフラとして存在し続けてきた誇りを取り戻していただきたい。
 その点で官邸主導で進んだ農協改革を一度、見直したほうがいい。心配しているのは、公認会計士監査への移行や産業政策重視によって、採算性を非常に求められた結果としての営農指導軽視です。つまり、改革の結果、農協は農協でなくなりつつあるのではないか。もう一回、農家や地域のみなさんにとって自分たち農協の存在意義はいったい何なのかということを考えた改革を進めてもらいたいし、一人は万人のために万人は一人のためにという協同組合運動の原点を忘れてはいけない。そこにもう一度戻って「農協改革の改革」をするべきです。
 准組合員の利用規制の問題も自分たちで決めればいい。組織の裁量に委ねられるもので、まして国が口を出すものではありません。



…。


実に真っ当な議論だと思います。


食料安全保障を国・政治の根幹にもう一度据えなければならないこと、


市場原理だけで農業を語ってはならないことなど、


「稼ぐ」ことよりも、「国民を食わせる」ための農政が必要だと強調し、


地方の人々に農業を続けてもらうことで、


外国人の土地購入を防ぐなど、


農業は国防の役割も果たすことができるとしています。


さすが、地方選出(香川県第2区)の政治家だといったところです。


…農協改革を志向するどこかの与党議員とは大違いですね。


また、これらの考え方の下に、


次期衆議院選挙で野党が結集する起爆剤にしたいという思いもあるようで、


これは少し期待できるかもしれません。


改革や市場原理主義が叫ばれた平成の時代には、


政治家はこうした議論を表立ってできなかったように思います。


であれば、令和という時代を迎え


少しづつ時代が変わりつつあるということでしょうか?


ただし同時に、現在の農政による厳しい現実もあります。


それを明日はご紹介します。


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アメリカで「株主第一主義」修正の動き!?~新自由主義の権化が方向転換。日本は?~




「企業は株主のためにある」


こういった考え方が最も浸透している印象のあるアメリカですが、


その考え方を見直しする動きがあるようです。



「米経済界「株主第一主義」見直し 従業員配慮を宣言」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48745980Q9A820C1000000/

【ニューヨーク=宮本岳則】米主要企業の経営者団体、ビジネス・ラウンドテーブルは19日、「株主第一主義」を見直し、従業員や地域社会などの利益を尊重した事業運営に取り組むと宣言した。株価上昇や配当増加など投資家の利益を優先してきた米国型の資本主義にとって大きな転換点となる。米国では所得格差の拡大で、大企業にも批判の矛先が向かっており、行動原則の修正を迫られた形だ。


19日公表した声明には同団体の会長を務めるJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)のほか、アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEOやゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラCEOなど181人の経営トップが名を連ねた。賛同企業は顧客や従業員、取引先、地域社会、株主といった全ての利害関係者の利益に配慮し、長期的な企業価値向上に取り組むという。


今回の宣言は米経済の根幹を成す「資本主義のかたち」を大きく見直すものだ。米ビジネス・ラウンドテーブルは1978年以降、定期的にコーポレートガバナンス(企業統治)原則を公表し、97年からは「企業は主に株主のために存在する」と明記してきた。JPモルガンのダイモンCEOは発表文で「アメリカンドリームは存在するが、揺らいでいる」と指摘した上で、行動原則の見直しは従業員や地域社会への投資継続を約束するものだと述べた。


「株主第一主義」の見直しは、米経済界に対する国民の批判をかわす狙いもありそうだ。トランプ米政権の税制改革で企業の利益水準は押し上げられたが、賃金の伸びは鈍い。余剰資金は自社株買いに回り、米株高を演出した。恩恵を受けたのは株式を持つ資産家や、自社株で報酬を得る経営者層――。そんな不満が富裕層増税や大企業解体などを唱える米民主党左派への支持につながっており、米経営者の危機感は強い。


80年代から2000年前後に生まれたミレニアル世代の存在も、行動原則の見直しにつながった。今回の声明に加わった米運用大手ブラックロックのラリー・フィンクCEOは、投資先企業に送った年初の手紙の中で、ミレニアル世代の6割が「会社の主な目的を利益追求より社会貢献と考えている」と指摘。経営者に対して社会問題の解決に取り組むよう求めていた。米経済界は優秀な人材の獲得や投資マネーの取り込みで、同世代の影響力を無視できなくなっている。


日本における株主と企業の力関係にも影響を及ぼす可能性がある。日本企業は近年、海外投資家から促される形で、株主重視経営への転換を迫られてきたからだ。すべての利害関係者の利益に配慮した経営は、日本の経営者が長年、主張していた経営思想と重なる。もっとも日米で企業の置かれた立場は異なる。米国は行き過ぎた株主重視の結果、揺り戻しが起きているのに対し、日本は過度な株主軽視が、企業の競争力低下を招いた。



…。


時代が変わりつつあるな、という印象を受けます。


株主を軽視することは、もちろん好ましくありませんが、


同じように、その企業で働く従業員やその家族、取引先、


事業を展開する地域のことを軽視することもまた、好ましくありません。


アメリカではここ2~30年の間、


過度に株主を優遇し、それ以外の利害関係者を軽視する考え方が主流でした。


当然、多数を成すのは株主以外の方々…。


であれば、社会に不満がたまり、不安定化するのも無理はありません。


それを体現する形で、労働者の側に立つトランプ大統領が登場したわけです。


特筆すべきなのは、今回の株主第一主義の見直しが、


世論を受けて動き出そうとしているということです。


自分は無力だと考えている有権者が日本には多いと感じますが、


このアメリカの動きを見ると、勇気づけられませんか?


アメリカ国民にできて、日本人にできないはずはありませんよ!


…。


もっとも、記事の締めには「日本は株主軽視が過ぎる」という趣旨の記述があります。


うーん…。本当にそうなんですかねぇ…?



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現代貨幣理論(MMT)を理解するコツとは~政府は貨幣の供給者であるという現実~




現在、学会や政界などをにぎわせている、「現代貨幣理論(MMT)」


なにやら、難しそうだと感じる人も多いかと思います…が、


京都大学教授の藤井聡氏が、その理解のコツについて記事を書かれています。



【藤井聡】MMT理解のコツ(実践編):「政府が貨幣の供給者だ」という一点を知るべし
https://38news.jp/economy/14183

ケルトン教授が来日されてから、はや二週間。

その間、参議院選挙があり、
増税を掲げた与党の「大勝」を通して、
消費増税延期に向けた一縷の望みは事実上消滅。

日本国民は自ら「地獄の扉」を開き、
先進国から転落することを愚かにも事実上、
確定させてしまうとの愚挙に出たわけですが・・・

こうなれば後は心ある国民は、
消費増税後の世界を見据えた
「消費減税」に向けた闘争の準備を、
始めねばなりません。

その闘争に向けた最大の武器こそ、
もちろん、ケルトン教授が主唱する、
MMT、現代貨幣理論

ケルトン教授との対話から
学ぶことは数多くありましたが、
その中でも特に当方が学んだのは、

「MMTで最も大切なポイントは、
政府は『貨幣の供給者』だという点です」

という「説明の仕方」でした。

もう少し言葉を足すなら、

「政府は貨幣の供給者であり、
貨幣の使用者である国民とは、
ぜんぜん違うのです」

と言うお話し。

MMTにはいろいろな側面があるのですが、
(信用貨幣論、表券主義、貨幣循環論・・・等)
確かに、この説明なら、誰でもスグに理解できるし、かつ、
「政府は財政赤字が原因で破綻することは無い」
というMMTの最大のメッセージを即座に理解できます。

なぜなら、「貨幣の供給者」である政府は
自分で好きなだけ貨幣を作れるわけですから、
どれだけ借りようが、
「破綻する」事などある筈ないですよね。

もちろん、貨幣が増えすぎて、
過剰なインフレになってしまっては
経済が混乱してしまいますが―――

逆に言えば、
「政府は貨幣の供給者だ」
という一点だけ抑えておけば、
そうしたインフレの問題「だけ」が、
政府支出量の制約になるんだという事も、
即座に理解することができますよね。

さすが、物わかりの悪い
不誠実な経済学者や政治家達を相手に、
何度も、何度も、何度も、何度も・・・
MMTを説明してきたケルトン教授ならではの、
ストレートな説明方式だと改めて感心した次第です。

・・・

さて、「政府が貨幣の供給者」
であることさえ知っていれば、
次のような重大な「結論」を、
即座に得ることができます。

「財源調達のための消費増税が必要だ」論は、完全に間違い。
政府は自分で貨幣を作れるわけですから、
景気を冷え込むこと必至の消費増税までして
政府が貨幣を調達しようなんていうのは、
「正気の沙汰」とは思えない暴挙だ、
という他ありません。

■「オカネがないから政府投資はできない」というのは、真っ赤なウソ
国民の生命と財産を守る防災投資、
次世代を担う日本人を育てる教育投資、
日本の科学技術力を増強する科学技術投資、
地方を豊かにする地方の新幹線・高速道路の投資等々・・・

こうした投資は全て、
日本国民を幸福にするものですが、今、
「政府にはオカネがない」というだけの理由で、
その投資の全てがストップしています

しかし、「政府はオカネの供給者」なのですから、
政府にオカネが無い、なんて話は、
100%純粋な「真っ赤なウソ」。

インフレにならない限り、これらへの政府投資は、
全て進めることができるのです。

したがって、今の政府は国民を欺いて、
防災や教育、地方創生について成すべき仕事をしない
「サボタージュ」(=サボり)を重ね、
国民の生命と財産を傷つけ続けているのです。

「オカネがないから賃金水準の政府保証なんて無理」というのも真っ赤なウソ
政府は今、経済成長のためにも賃金の上昇が必要だ、
と主張し、財界に賃上げを要請し続けていますが、
そんなのは、完全なる「二階から目薬」。

いくら政府が要請しても、
民間が賃上げなど、する筈もありません。

ですが、公務員給与を上げたり、
政府支出で賄う公定賃金を直接上げたり、
賃上げ分を政府が補助をすれば、
確実に賃金を上げることができます。

ところが、今の日本でそんな主張をすると、
「そんな財源、どこにあるんだ!?」
という嵐の様な批判が巻き上がりますが、
そんな批判もナンセンス。

そもそも政府が貨幣の供給者なのですから、
政府は賃上げ対策を「直接」行うこともできるのです。

つまり、「オカネがないから賃金水準の政府保証なんて無理」
っていう話も、真っ赤なウソなのです。

・・・

このように、「政府が貨幣の供給者」
であるという一点さえ抑えておけば、
誰がウソをついているのかが明らかになり、
政府が成すべき政策方針が明確になるのです。

しかも、「政府が貨幣の供給者」という一点さえ抑えておけば、
「MMTを深く知ること」もより容易くなるのですが・・・
その点についてはまた、次週、解説することとしましょう。

いずれにしても、
MMTについて知人、友人に語る機会があれば是非、
「政府が貨幣の供給者」
だという一点をまず、ご説明差し上げてみてください。

そうすると、
「正しくMMTを理解するの仲間」が
一人また一人と、増えていくことになるかも・・・知れません。

どうぞ、よろしくお願い致します!



…。


MMTの細かい理論体系を知るには、それなりの時間がかかるでしょう。


しかし、この「政府が貨幣の供給者」という原則を頭に入れていれば、


大きな流れは理解できています。


また、こうした分かりやすいフレーズを使えば、


より多くの人が興味を持ってくれるかもしれません。


こうした伝え方の工夫も、考え方や理論を広めることには大切ですね。


ぜひ藤井氏の記事を拡散してください。



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新聞に信を置く日本人~その情報、本当に正しいと言えますか?~

藤井聡京都大学教授によると、


世界的に見て、日本人は新聞を「信頼する」と答える人が多いようです。



【藤井聡】残念ながら、「信」は時に「悪の暴走」をもたらすのです。
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20190815/

こんにちは、
表現者クライテリオン編集長、
京都大学教授の藤井聡です。

当研究室では、マスメディアの研究を
細々と長年、続けているのですが、
その中で、この度改めて作ったのが、このグラフです。


日本人だけが、断トツでメディアを信用しているというグラフですが・・・
このデータ出典は、
下記のWorld Values Surveyのサイトで公開されているもので、
http://www.worldvaluessurvey.org/WVSOnline.jsp
「新聞を、どれくらい信用していますか?」
という質問を「G7各国」の国民に行ったもので、
「強く信用している/信用している」
のいずれかを選んだ回答者の割合を示しているのがこのグラフです。

(なお、このデータは、
2005~2009年に行われた調査結果ですが、
2010~2014においても、ほとんど同じ結果が得られています。
なお、2010~2014調査では、国の数が限られています)

ご覧のように、G7の諸外国は、
新聞情報を信用している国民は、ほとんどおらず、
せいぜい、2、3割程度であるのに対して、
日本では、約73%という、大半の人々が、
新聞の情報を信用しているのです。

しかし、しばしば
マスメディアが「ウソ」を垂れ流しているのは
紛うことなき事実。

要するに、欧米諸国の人びとに比べて、
日本人がメディアに対して、
丁寧に言うなら「ナイーブ」、
もっとあっさり言うなら「愚か者」、
(関西弁で言うなら、「アホ」)なわけです。

このままでは、我が国で
「全うな民主主義」なるものが醸成され、
「適切な世論」が形成されることなど、
絶望的に難しい、ということになるでしょう・・・。

実際、まともに考えれば、
絶対にありえない「デフレ下での消費増税」が、
まさに今、断行されようとしています。
その結果、日本経済はボロボロになり、
国民の格差と貧困がさらに加速しようとしているのですが・・・
それもこれも、煎じ詰めて考えれば、
「日本人が信頼性なき新聞を信頼している」
からに他なりません。

何といっても、あらゆる大手新聞が、
消費増税待った無しだと言い続けてきた訳ですから・・・。

つまり、

信ずることは時に、悪を暴走させるのです。

もちろん、
日本のマスメディアの
「ジャーナリストとしての倫理観」
が十二分以上に高ければ、
この「メディアに対する信頼の高さ」
は日本の貴重な資産となります。

ですが、そんなものは全く期待できないのは、
筆者の長年の研究で明らかです。

例えば、現代の新聞記者は、
今や「ジャーナリスト」というより
「サラリーマン」になっており、
新聞社も「ジャーナリズム機関」というよりも
「民間企業」に成り下がっている実体が、
下記研究より、実証的に示されています。
https://policy-practice.com/db/3_181.pdf

無論、「ジャーナリズム魂はもう、皆無だ」
とまでは言えないでしょうが、
資本主義が暴走する我が国日本では、
彼らとて資本主義の論理からは、
自由にはなれないのです。

・・・何の因果か、
このメールマガジンや表現者クライテリオンに
目を通している皆さんは、
そこで目にする論調や情報が、
普段、新聞やテレビに溢れている情報とは、
少し趣の異なるものだと、お感じのものと思います。

是非とも、そんな風にして可能な限り、
複数の情報源に目を通すようにして、
異なる意見がある場合には、
どちらが正しいかを、
一度は少しだけでも考えてみる
という習慣を身に着けてもらいたいと思います。

その習慣さえあれば、
あなたの判断の基準(クライテリオン)が
少しずつ磨かれ、
メディアが垂れ流すウソに騙されるリスクが、
ぐっと減っていくこととなるでしょう。

国民一人一人のそんな「考える力」を取り戻し、
それを通して一人ひとりの内に作り上げられていく
判断の基準(クライテリオン)だけが、
民主主義における「悪の暴走」を防ぐ、
唯一の資産なのです。

思えば、明治黎明期に、
福沢諭吉が「学問のすすめ」を刊行したのも、
まさにそうした思いからでした。

当方も是非、一人でも多くの「現代」の皆さんに、

本誌「表現者クライテリオン」に

お触れていただきたいと、祈念しています。

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。



…。


藤井氏にすれば、メディアがウソを報じることはままあり、


それを鵜呑みにする態度自体が極めて幼稚だということです。


こと、消費増税に関しては、


藤井氏の見解は正しいのかもしれません。


現在のようなデフレ下での消費増税は、


間違っているのが明らかにもかかわらず、


大手新聞は賛成一色です。


軽減税率の対象に新聞も含まれる代わりに、


消費増税について反対するな、という圧力がかかっているのでしょうか…?


いずれにしても、


1つのメディアを完全に信頼しきるのは必ずしも適切ではないかもしれません。


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ロスジェネ世代の救済を食い物にする人たち~安倍政権の本当の狙いとは?~

政府がバブル崩壊のあおりを受けて、


十分に所得を稼ぐ仕事に就けなかった方々「ロストジェネレーション」


救済する方針を示しています。



「氷河期100万人就職支援、政府 研修業者に成功報酬」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48547530U9A810C1MM8000/

政府はバブル崩壊後に高校や大学を卒業した「就職氷河期」世代の就職支援を本格化させる。30代半ばから40代半ばの人たちは、他の世代に比べ国内外の厳しい経済情勢の影響で不遇な労働状況に置かれたとみて、年齢層を絞る異例の対策を講じる。正規雇用で半年定着したら、研修業者に成功報酬型の助成金を出す。支援対象は100万人規模で、経済や社会保障の支え手になってもらう狙いがある。

経済財政諮問会議の資料によると、バブル崩壊後の就職難で、統計のある1997~2004年には毎年8万~12万人が未就職で高校や大学を卒業した。現状より3~5倍多い水準だ。


03年に35~44歳で無職やフリーターの人は57万人だったが、18年には92万人に増加した。不安定な就労状況で、所得も正社員などに比べ低いとみられる。引きこもりなどになっている人もいる。

日本総合研究所の分析によると、2人以上の勤労者世帯の実質消費額は就職氷河期にあたる1975~79年生まれの人が40代前半時点で月約30万円となった。これは65~69年生まれが40代前半だった時より2.5万円前後少ない。47~49年生まれの団塊の世代と比べると約7万円減った。30~40代はマイホームの購入や教育費などが増える時期にあたり「国全体の経済成長にも影を落としている」(下田裕介主任研究員)との指摘もある。

所得や消費が伸びず、年金や医療保険の基盤を弱める要因にもなるうえ、老後には生活困窮者が増えるおそれもある。総合研究開発機構(NIRA)によると、氷河期世代の非正規雇用者などが生活保護を受けるようになった場合、追加で累計20兆円規模の給付が必要になると試算している。

所得の引き上げで消費を底上げし、社会保障の担い手になってもらうことで、社会からの疎外感も薄められるとみている。就職氷河期世代のうち非正規で働く人や非労働力人口、完全失業者は計600万人超。このうち100万人程度が支援を必要としていると試算する。月内にも支援策をとりまとめる方針だ。

支援の柱になるのは成功報酬型の民間委託だ。専門知識やスキルを教える民間教育機関が非正規雇用者に半年程度の訓練や職業実習をした場合、国から経費の一部として最大20万円出す。さらに受講者が訓練などを始めてから8カ月以内に正規雇用の職に就き、半年間きちんと働ければ追加で最大40万円を支給する。

短期資格取得コースも新設する。厚生労働省が民間の業界団体に委託し、希望者に1カ月程度の集中訓練をする。建設なら小型クレーンやフォークリフト、運輸なら運行管理者や整備管理者などの資格取得を想定している。業界団体は資格を取った人に職場見学や実習の場を提供する。

自立支援相談機関やひきこもり地域支援センター、ハローワークなどが連携して長い期間、職に就けていない人の社会参加も促す。

政府の支援規模は3年間で数百億円になる見通し。政府は財源として雇用保険を充てる方針だ。

長い期間就業していない人や、単純労働に従事している人も多く、企業の求める人材とは異なる場合が多い。政府は職業訓練や資格取得など通じて、雇用のミスマッチを埋めたい考えだ。

状況に応じた的確な支援策を実施できるかが課題だ。特に助成金制度は「ばらまき」にならないように、効果を厳しくみる必要がある。



…。


ロスジェネ世代を救済するのは結構なことに違いはありません。


彼らがより高い所得を稼ぎ、


消費を活性化してもらうことはとても大切ですから。


ですが、今回のその方法には疑問を感じます。


記事によると、支援の柱は「民間委託」になるようです。


ん?そんな周りくどいことしなくても、


政府が公務員なりなんなりで直接雇用すればいいのでは?


これだと、民間委託の対象となる業界が儲かるだけです。


例えば、人材派遣業とか…。


もしかすると、人材派遣会社の経営者が政府に入り込み、


本来は高尚な政策であるロスジェネ世代の救済を、


自分の利益に結びつけようとしている勢力がいるのかもしれませんね。



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中野剛志内閣総理大臣談話(いわゆる中野談話)~「戦争の反省」の本当の意味~




本日は終戦記念日です。


毎年、この日の近辺に思い出すのが、


「中野剛志内閣総理大臣談話(いわゆる中野談話)」です。


連日、中野剛志さんの話題で申し訳ないですが…。


この談話は、戦後70年に当たる2015年の8月15日に、


中野氏が発表したものです。


(※中野氏は内閣総理大臣ではありません。もし自分だったら…という体)



「中野剛志内閣総理大臣談話(いわゆる中野談話)」
https://politas.jp/features/8/article/442

私は、さきの大戦の終結から70年を迎えるにあたり、戦争における内外のすべての犠牲者に対し、改めて心より追悼の意を表します。

さきの大戦においては、数多くの人々が戦陣に散り、戦禍に倒れました。また、我が国は、かつての植民地支配と侵略により、アジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私たちは、こうした過去の不幸な事実から目をそらしてはなりません。

戦後の我が国は、さきの大戦から数多くを学び、その教訓を踏まえて、いかなる国際紛争も国際法にのっとって平和的に解決するという立場を貫いてまいりました。また、政府開発援助(ODA)や国連平和維持活動(PKO)などを通じて、あるいは国際法に基づく紛争の解決を強く訴えかけることによって、国際社会の平和と繁栄のために努力してまいりました。我が国の国際平和の実現の志と行動は、今後もいささかも変わりません。

そのような我が国に対して、まことに残念なことですが、さきの大戦をめぐって謝罪を繰り返すことを求める声が依然としてあります。

しかしながら、私は日本政府を代表する者として、さきの大戦における我が国の国策に対する正邪を判断し、謝罪を表明することは適当ではないと考えます。その理由を申し述べます。

すでに確認しましたように、我が国がさきの大戦や植民地支配によって、数多くの人々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の犠牲を強いたことは、歴史の事実であります。

また、当時の我が国の指導者たちに多くの判断の過ち、弱さ、そして愚かさがあったこともまた、歴史の事実として認めなければなりません。こうした不幸な歴史を私たちは二度と繰り返してはなりません。

しかしながら、他方で、近代国家となってから未だ年月が浅く未熟な我が国が、力のある国家による侵略や植民地支配が当然のこととされていた帝国主義の時代に巻き込まれていく中で、自国の生存を確保するためにやむなく武力に訴えざるを得なかったという事情も、当時としてはあったのだろうとも思います。

同時に、私は、戦争を回避しようと懸命に努力した人々、アジアの解放や五族協和という大義を真心から信じ、行動した人々、祖国の同胞や家族を守ろうとして戦い、犠牲になった人々、そしてその遺族の方々の深い悲しみを想うのです。

このような日本人が数多くいたこともまた、忘れてはならない歴史の事実のはずです。

私たちは、こうした人々の尊い犠牲の上に生かされている子孫です。そのような私たちが、さきの大戦における父祖たちの行動のすべてを一面的に不正義であると断罪し、謝罪を表明することが果たして適切なのでしょうか。私は、そうは思いません。

私は、さきの大戦における我が国の国策を正当化したり、美化したりしているのではありません。

ただ、歴史の事実というものは、現在の世代が現在の価値観によって一方的に裁くべきものではないということを申し上げたいのです。私は、さきの大戦を善か悪かではなく、ただ歴史の悲劇として受け止め、当時の敵味方を問わずすべての犠牲者の霊を慰め、静かに鎮魂の祈りを捧げたいのです。

戦後70年、我が国は国際法を順守し、平和と繁栄を享受してきましたが、世界からは未だ戦火が消えることはありません。国際法に違反する武力を背景とした領土・領海の拡張の動きも絶えません。70年前の戦争の解釈をめぐる不毛な政治的争いをこれ以上続けるのはやめ、現在の国際紛争や国際問題を平和的に解決するために、世界各国がともに手を携えていこうではありませんか。

私はここに改めて表明いたします。

我が国は、戦後の70年間と同様、今後も、いかなる国際紛争も国際法に基づいて解決するとの立場を貫いてまいります。同時に、そのことを世界のあらゆる紛争当事国に対しても強く求めます。そして、国際社会の平和と繁栄の実現のために全力を尽くすことを誓います。


…。


中野氏はかつて世界大戦という悲劇があったこと、


そして過去の日本はその当事者の一員であったことを事実とした上で、


戦争回避へ懸命に動いた日本人がいたことや、


国家として生き残る術として、日本が戦争を選んだことを踏まえ、


それを将来世代(つまり、我々)が一方的に


かつての日本は悪い国だったと断罪するのは正しくない、としています。


地に足が着いた議論だと思います。


中野氏の考え方に賛同できない人も、もちろんいるでしょう。


もしも私が戦争経験者であったとすれば、


同氏の意見に反発していたかもしれません。


しかし、色々と考えさせられる文章です。


お時間があれば、読んでみて下さい!



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「多数者の専制」に対峙するために必要なこととは?~トクヴィルが示した「出版」の力~




中野剛志氏の著作「経済はナショナリズムで動く」の巻末では、



「過去約20年から現在まで、日本ではグローバル化・構造改革が政財界やマスコミなどが圧倒的に支持され、それに疑念を持つ者は異端視され、是非の議論すら許されない『空気』があった。いわば『多数者の専制』が生じているのではないか?」



という趣旨の記述が本人によってなされています。


これが事実であれば、絶望感が漂ってきますね。


同調圧力の強い傾向のある日本では、


一旦こうした「空気」が生じると、


それが間違っていたとしても、


それを正すのはほとんど不可能ということになってしまいます…。


しかし、その直後に中野氏は


フランスの政治思想家、アレクシ・ド・トクヴィルの言葉を引用しています。



「それ故に今日では、圧迫される市民でも1つの自衛手段だけは持っている。それは国民全体に訴えることである。そしてもし国民が彼の訴えに耳を傾けないならば、彼は人類全体に訴えればよい。そして彼はこれをなすために、1つの手段のみを持っている。それは出版である」



…。


中野氏に言わせると、


トクヴィルの教えに倣って本を出版した(している)とのことです。


出版と言うと、何だか大げさですが、


今や誰もがインターネットを通じて、情報発信できます。


もしも、少しでも今の世の中の流れに問題意識を持っているとすれば、


できることから、動いてみましょう!



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「同一労働同一賃金」の罠~正社員の待遇を引き下げる口実に使われる~




「同一労働同一賃金」


この制度・考え方は、能力や成果が同じ場合、


正規・非正規という立場に関係なく賃金を同一水準にするというものです。


来年4月にスタートを予定しています。


誠に立派な考え方だと思いますが、実態はどうでしょうか。



「同一賃金、正社員給与減も」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190805-00000089-kyodonews-bus_all

正社員と非正規労働者の不合理な待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」が来年4月にスタートすることに伴い、大企業の5社に1社が正社員の基本給や賞与を減らす可能性があることが5日、人材会社「アデコ」の調査で分かった。政府は同一賃金の指針で、労使合意のない正社員の待遇引き下げを望ましくないとしており、懸念が広がりそうだ。

 同一賃金は、能力や成果などが同じ場合、正規、非正規に関わりなく賃金などを同一水準にする考え方で、働き方改革関連法に盛り込まれた。調査は同一賃金が先行導入される従業員300人以上の大企業の人事担当者500人を対象に今年3~4月に実施した。



…。


予想通り…と言いましょうか。


非正規社員の賃金水準を正社員と同じにするなら分かりますが、


多くはその逆、「正社員の賃金水準を非正規社員と同じにする」ようです。


デフレが続き、目の前の需要(仕事)が増えていない以上、


企業としては、正社員の給料を上げづらいです。


そんな時に、こういった制度が導入されるとどうなるでしょうか?


当然のように、正社員の給料を下げる口実に使われてしまいますよね…。


この「同一労働同一賃金」は


政府の経済政策の目玉の1つだったようですが、


もはや、正社員の給料を上げたくない財界のために、


意図的に導入しようとしているように思えてなりません。


…。


とはいえ、デフレから脱却できれば、この制度は機能するかも知れません。


であれば、そのために政府は緊縮財政をやめて、


大規模な財政出動を!



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使命感の方向性~その方向を間違えると、却って災厄をもたらす?~




野田佳彦前首相が、立憲民主党の会派への合流を検討しています。



「野田氏、前面に出ると反発大きく…」
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20190808-OYT1T50014/

衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」代表の野田佳彦・前首相は7日、国会内で講演し、立憲民主党から打診された立民会派への合流に前向きな考えを示した。立民や国民民主党の一部に会派合流への異論が残る中、「中道勢力の糾合」を訴える野田氏には正念場となりそうだ。

 野田氏は講演で「大同団結して政権交代の受け皿にならないといけない。(会派合流は)現実的なアイデアだ」と強調した。社保は8人が所属する。野田氏は9日に会派総会を開き、打診を受け入れる方向で意見集約を図る方針だ。

 2017年の民進党分裂以降、野田氏は立民、国民両党の橋渡し役を目指し、社保を結成した。今回の会派合流に向けても、事前に立民の枝野代表と連絡を取り合ったほか、7月末には議員会館の自室で国民の玉木代表と協議するなど「水面下での調整に汗をかいた」(野田氏周辺)。



…。


野党がまとまるならそれはそれでいいのですが、


気がかりなのは、野田氏が首相時代に


消費税増税を血眼になって推進していたことです。


「使命感を持っていた」とも言えるかも知れません。


彼が立憲民主党の会派に加われば、


せっかく野党間で醸成されつつある、


「消費増税ストップ!」の流れが止まってしまう気がしてなりません。


また、現在野田氏が所属する会派名は「社会保障を立て直す国民会議」です。


うーん、社会保障を建て直すのは結構ですが、


それは増税ではなく、経済成長でお願いしたいですね。


…。


野田氏は政治家として使命感を持って行動されているように見えます。


ただ、その方向性が間違っていては何にもなりません。


「使命感」…、素晴らしい言葉ではありますが、


何をしようとしているのかについてよく考えなければいけませんね。



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アメリカが福祉大国に?~時代の転換点を察知し、日本もこの流れに乗り遅れるな!~




「自由主義・市場経済」を国是とするアメリカにおいても、


「福祉国家」を求める声が上がるなど、時代が変わりつつあるようです。



「福祉大国論、米で急浮上」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45257000U9A520C1EA1000/

米国で2020年の大統領選に向けて、希望する全国民を政府が雇用したり、月1千ドル(約11万円)を全員に支給したりする壮大な福祉政策論が浮上している。米国は国民皆保険すらない民間主導経済だが、失業率は3%台と目先の不安はない。それが北欧を上回る「福祉大国論」が強まるのは、経済格差に加え、人工知能(AI)に仕事を奪われる懸念が台頭しているからだ。

「ホワイトハウスを奪取すれば『連邦雇用保障』政策を実現する」。民主党の大統領予備選に立候補したバーニー・サンダース上院議員は4月、アイオワ州での演説をそう締めくくった。20年の選挙公約に「国民皆雇用」を掲げ始めた。

サンダース陣営の政策担当者は「米国は今でも600万人の失業者がいる。新政策は公共事業によって希望する全員を政府が雇用できるようにする」と説明する。サンダース氏は16年の選挙でも急進左派と評されたが、当時掲げた「国民皆保険」は日本や欧州では一般的な制度だ。20年の同陣営は北欧を上回る「福祉大国」を目指すという。

「18~64歳の米国民全員に連邦政府が月1千ドルを支給する」。大統領選に立候補した台湾系の実業家、アンドリュー・ヤン氏は全国民に生活費を支給する「最低所得保障」が売り物だ。支持率は有力政治家を上回って候補者22人のうち8位前後につける。


(後略)



…。


アメリカでは2020年の大統領選挙への動きが活発化しており、


「民主社会主義」を掲げるバーニー・サンダース氏などが


「国民皆雇用」など、福祉色の強い政策を打ち出しています。


背景の1つは、アメリカで経済格差が広がっていることです。


特に若年層は格差に嫌気がさしているようで、


米ギャラップの調査では18~29歳のアメリカ人の多くは


社会主義を好意的にとらえ、


資本主義を支持する割合を上回っています。


格差に辟易した民衆が、政治に助けを求めているわけです。


「競争」をイメージさせるアメリカでこうした流れが生じているのは


とても興味深いですね。


一方で、日本はどうでしょうか?


格差や貧困は生じていますが、


それに反発する社会のうねりはまだ生じていません。


あえてうねりを挙げるならば、


「令和ピボット運動」、「薔薇マークキャンペーン」、


「日本の未来を考える勉強会」、「れいわ新選組旋風」などでしょうか?


わずかではありますが、


こうした「うねり」を支持・サポートしていけば、


少しずつ世の中がいい方向に動くかもしれませんね!



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「日本の未来を考える勉強会」のHPがオープン~反・緊縮財政を訴える政治勢力とは?~




安藤裕衆議院議員らが主催する、


正しい経済・財政について学ぶ勉強会「日本の未来を考える勉強会」の


公式HPが開設されました。



「日本の未来を考える勉強会HP」https://nihonm.jp/



…。


これまでの活動実績や勉強会の内容、


主催者の思いなどが掲載されています。


彼らはいずれも自由民主党の議員であり、


現在のグローバリズム緊縮財政などが


平成・日本の衰退をもたらしたという問題意識を持っています。


政権与党からこういった動きが出ているのは大変望ましいことです。


この流れを一層大きくするために、


彼らへの支援が必要です。


できることから、始めましょう!



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「It's a wonderful world」に桜井和寿氏が込めた思い~ミスチル談義~




Mr.Childrenの曲「It's a wonderful world」について解説します。


この曲は、10枚目のアルバム「IT’S A WONDERFUL WORLD」の


最後に収録されているタイトル曲で、


歌詞の秀逸さを感じる曲です。



Oh Baby 通り雨が上がるまで 

カプチーノでも頼んで待とうか? この醜くも美しい世界で


無駄なものなど きっと何一つとしてないさ


突然訪れる 鈍い悲しみに出会っても




「通り雨」は、嫌なこと・辛いことの比喩でしょう。



「辛いことがあっても、くじけずに行こうよ。」というところでしょうか?


「無駄なものなど…」以下は、このアルバムが出た時期とリンクしています。


このアルバムは、デビューから11年目を迎えたタイミングでリリースした一枚。


バンドの在り方を模索したり、爆発的に売れたり、


行き詰って活動休止したり、思い切って売り上げ度外視のアルバムを出したりなど、


紆余曲折を振り返ってのフレーズです。


また、「これで正しかったのだろうか?」という疑問を感じていることが伺えます。



あなどらないで 僕らにはまだやれることがある

手遅れじゃない まだ間に合うさ


この世界は今日も美しい そうだ美しい




そして、立ち止まっている暇はない、


自分たちが今できることをやっていこう!


という強い決意を感じます。


何だか、歌詞を読んでいると少し力が湧いてきませんか?


これほど成功したバンドでも、


こうした迷いや戸惑いを持って生きている。(かなり古い作品ですが…)


なら、自分も…。と、少しだけ頑張れます。


機会があれば、ぜひ聴いてみてください。



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そんなに稼いでどうするの…?~巨額の役員報酬は日本人の価値観に合うか~




役員報酬に関する記事を読み、


タイトル通りのことを感じました。



「『役員報酬1億円』最多の557人」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46717640Y9A620C1EA5000/

2019年3月期に上場企業で1億円以上の役員報酬を得た「1億円プレーヤー」の数が557人(上場子会社除く)と昨年の537人を上回り、過去最高を更新した。グローバル競争を勝ち抜くため優秀な人材を確保しようと高額報酬を付与する企業が増えている。業績や株価に連動する報酬も増えており、報酬体系が「成果に報いる」欧米型に近づいてきた。

28日時点で各社が開示した19年3月期の有価証券報告書(有報)を東京商工リサーチが集計した。1億円以上の報酬を付与する企業も273社と過去最高を更新した。

1億円プレーヤーの顔ぶれをみると、上位10人のうち6人が外国人だ。

1位はソフトバンクグループ(SBG)のロナルド・フィッシャー氏で約33億円。19日の総会で報酬の多寡について株主から質問が出た際、孫正義会長兼社長は「欧米ではもっと高額な報酬が支払われることもある」と答え、理解を求めた。同社はマルセロ・クラウレ氏(米通信子会社スプリント会長)など計4人が10億円を上回った。


(後略)


…。


記事では、欧米型の成果に最大限報いる報酬体系に近づいてきた、


ことを称えるように書かれています。


実際、どうなのでしょうか。


「和」を尊ぶ文化のある日本では、


一人があまりにも巨大な報酬を得ることに疑問を持つ人も多そうです。


記事の表を見ると、上位は外国人が多くランクインしています。


やはり、日本人と外国人の価値観は違うのでしょうか…?



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