消費税増税を前に~あきらめるのではなく、これから出来ることとは!?~




明日、10月1日から消費税率が10%に上がりますが、


その直前の日に藤井聡京都大学教授(元内閣官房参与)のコラムをご紹介します。



【増税は「リーマンショック超え」の大災厄を招く】
https://president.jp/articles/-/30039

▼97年3%→5%から始まった日本の凋落
消費増税で何が起こるかが、知られていない

2018年末まで6年間、内閣官房参与として内閣府に在籍していましたが、消費増税を推し進める財務省の大変な強さを感じました。政府、国会、野党、学会とあらゆる領域に増税推進派が多数を占めているんですが、そういう状況をつくり出したのは明らかに財務省。マスメディアにも大きな影響力を持ち、財界に対しても、社会保険料の負担を軽減したり法人税を減らしたりするのとバーターで増税に賛成させるという形で影響力を使っています。

財務省の勝利の最大のポイントは、経済学者を押さえたことです。

学者が真実を語れば、それがメディアを通じて政治家と世論に伝わり、増税を止める状況をつくれたかもしれませんが、吉川洋(東京大学名誉教授)、土居丈朗(慶應義塾大学教授)、伊藤隆敏(東大・一橋大学名誉教授)といった主流派の経済学者がほぼ全員財務省の意向を汲んでいますから、その意向に反するような情報はメディア上ではごく少ないという状況が長く続きました。データそのものは政府が隠さずに公表していましたが、それをちゃんと加工してメッセージを伝えるという作業を、経済学者、エコノミスト、ジャーナリストがほとんど行ってこなかったのです。


(中略)


まず、増税した瞬間に個人消費がほぼ増税分だけ減ります。なぜなら、家計の出費額はモノの購入と税金とに分けられますが、今どき国民の可処分所得の金額は増税する前でも後でも別に変わりませんから、家計の出費額もそのまま。だから、税金が増えればモノの購入額は必然的に減ります。単純な話です。すると、実質的な需要が減って、必然的に売れるモノが減るわけです。

この短期的な影響以上に恐ろしいのは、消費の伸び率への影響です。ご存じのように日本のGDP(国内総生産)の半分から6割程度を個人消費が占めるわけですが、その消費の「伸び率」は、税率が3%から5%に、5%から8%に上がった際、増税前の半分になっているのです。


(中略)


この間の経済の変化についての読者ご自身の肌感覚や、平成の日本の経済・産業史を思い起こしていただくと、消費増税以後の平成期に、日本と日本人の未来がどれだけ奪われたかが、容易にご想像いただけると思います。所得が減り、消費が減る。そして国民が貧困化し、経済が下落し、政府の収入、税収が減る。さらに国民経済の規模そのものも停滞し、衰退していく。国力そのものも相対的に下落し、国際社会における地位も低下しました。

かつては世界の18%を占めた日本のGDPも、今は6%程度です。尖閣列島問題が起こったのは、中国にGDPを抜かれた10年の9月でした。こうして日本は後進国化していくのです。単に、消費者がかわいそうだから、というだけが増税反対の理由ではありません。


「借金は全部返せ」という強迫観念が利用されている

90年代に入るまでの日本経済は、経済企画庁や建設省などが投資を行い、それを通して実際に成長し続けていました。しかし財政緊縮派が強くなった90年以降は、財務省の緊縮の圧力が強くなり、その結果、投資が先細りとなり、経済産業省や官邸などが主導する「構造改革」で成長しようという路線に変わりました。

つまり、財務省が「カネはない。経済成長したいならカネを使わずに何とか適当にやれ」という態度を取ったがゆえに、官邸を中心として編み出したのが、構造改革路線だったのです。デフレの日本が、投資せずに成長するなんて錬金術のようなもので、事実上不可能。構造改革は、緊縮財政の鬼っ子で、いくらやっても景気は良くなりません。


(後略)



…。


ご自身の内閣官房参与時代のご経験なども踏まえられており、


かなり読み応えのある内容です。


残念なのは、これほど経済・財政に関して深い見識をお持ちの方を


政策のアドバイザーである内閣官房参与に起用していたにも関わらず、


緊縮財政路線を継続した(している)安倍政権です。


それほど、財務省ほか緊縮財政勢力の力が強いということでしょう。


記事の中で興味深いのは2点。


1点は、90年代以降、財務省主導の緊縮財政路線が勢いを増す中で、


それでも何らかの経済政策を実行するために、


構造改革を続けてきたことです。


供給が需要を上回るデフレ期に、


供給力を高める構造改革なんて行っても逆効果なだけ、


というのは当たり前の話なのですが、


そんな中で構造改革が推し進められてきたのは


そういったことも背景にあったのですね。


もう1点は、


財務官僚は緊縮財政が国民を豊かにしていないことに


もう気が付いているにも関わらず、


そうした見たくない現実に目を背けている、ということです。


財務官僚の気持ちは分からないでもないですが、


国の動きを決めるエリートであるならば、


そんなくだらない自己防衛意識は金繰り捨ててほしいものです。


…。


ともあれ、消費税増税阻止に向けて自分のやれることをやってきた立場からすれば、


今回は完璧に敗けです。しかも完膚なきまでに…。


しかし、重要なのは僕らが諦めない限り、


緊縮財政路線との闘いは続く、ということです。


財務省などは、すでに10%からのさらなる税率引き上げの議論を始めています。



「さらなる増税の在り方焦点=安定的な税収確保「不可欠」-政府税調」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019090401063&g=eco



正直、政府の経済センスのなさには呆れてしまいますが、


政府がそう出るのならば、粘り強く反対するしかありませんね。


明日からも、消費税のさらなる引き上げ阻止と、


減税・廃止に向けて、自分のやれることを地道に続けていきます。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
人気ブログランキングに参加しています。ぜひクリックをお願いいたします。

社会・経済ランキング
にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村

【ツイッター】

農業は国民を食わせることが本分~今、農政に必要な意識とは?~




現在の政権が成立してから、


農業に関して「これからは攻めの農政だ!」


何て言うフレーズをよく耳にするようになりました。


こうしたフレーズや考え方に疑義を呈する記事をご紹介します。



【提言 JAグループに望むこと 柴山桂太・京都大学大学院准教授 周回遅れの農政に否 自給体制の強化急務】
https://www.jacom.or.jp/noukyo/tokusyu/2019/07/190724-38699.php

食料・農業・地域の未来を拓くJA新時代を本当に迎えるために、いまJAグループは何を考え、どのような行動を起こすことが必要なのかについて、柴山桂太京都大学大学院准教授に提言していただいた。

◆危うい"輸出戦略" 国家間の対立激化

グローバル化の時代は長続きしないのではないか。私は以前からそのように主張してきた。歴史を振り返っても、市場が開放され各国の経済が緊密に結びついた時代の後には、必ず巨大な反動の時代がやってくる。19世紀後半から本格化した前回のグローバル化が、やがて各国の保護主義を招くことになったのはその好例である。
 20世紀後半から始まった現代のグローバル化も、いずれ激しい逆流に見舞われることになるのではないか...。最近の国際情勢を見る限り、私の予想は大きくは間違っていなかったようである。これまで自由貿易の旗振り役だったアメリカで、公然と保護貿易を唱える大統領が出現する。他の地域に先駆けて市場統合を進めつつあった欧州では、選挙の度に反EU派の政治勢力が台頭している。私の見立てでは、これはまだ新たに始まりつつある歴史的変化の、ほんの序盤に過ぎない。近く起こる次の世界的な景気後退で、すでに表面化しつつある国家間の対立は、ますますエスカレートしていくことになると思われる。

(中略)

そのような視点に立ったとき、危惧されるのは日本の農政である。安倍政権は「攻めの農政」を合い言葉に、農業生産物の輸出を積極的に後押ししている。海外の消費者に販路を拡大することが日本の農業を再生させる切り札になる、との考えに基づいているのだろう。だが、国際政治経済の現状を考えた時、農業の輸出志向戦略は本当に望ましいと言えるのだろうか。
 改革派は、農業の国際競争力を高めるために、生産の大規模化や株式会社の新規参入を認める方向に舵を切るべきだと主張している。なるほど品目によっては、そのような改革が求められる分野も存在するのだろう。だが、海外への販路拡大を前提とした農政改革に危うさを覚えるのは、私だけではあるまい。

(中略)

もちろん、農産物の輸出を頭から否定したいわけではない。品目によっては輸出の余地が大きいものもあると聞く。また地域によっては農地の大規模化を進め、余剰生産物の海外販売に活路を求めざるをえないところもあるのだろう。だが、海外市場への依存度を高めるとは、自分たちではコントロールできない国際政治経済の不確実な要因に事業の未来を左右されてしまう、ということでもある。それに国際競争力を獲得するにはさらなるコスト削減に向かわなければならないが、それによって農業従事者の所得が増えるのかは未知数である。

(中略)

だが、日本の農政が、官民一体となってグローバルな市場を積極的に取り込む「重商主義型」に転換することが、長期的に見て本当に望ましいことなのだろうか。冒頭にも述べたように、今や世界各地で、行きすぎた国際分業を自国優位に編成し直そうとする動きが生じ始めている。その過程で生じる国家間の摩擦は、これから大きくなることはあっても小さくなることはないだろう。過去30年以上にわたって続いてきたグローバル化の流れが、この先30年も同じように続く可能性は低い。時代は明らかに「スローバリゼーション」に向かう兆候を示しているからだ。
 国際的な緊張が高まるという見通しの下では、各国は農業の自給体制をこれまで以上に強化しようとするだろう。これから農業をグローバル化しようとする日本は、こうした歴史の流れに逆行する「周回遅れ」の存在として孤立していくのではないか。現状を見る限り、そのような疑念が拭えないのである。

(後略)


…。



雑誌「表現者クライテリオン」の編集委員を務められている


柴山氏の記事だけあって、地に足が着いたものだと思います。


もちろん柴山氏も、


日本の農産品を海外に輸出することを否定しているわけではありません。


ただ、一貫して強調されている視点は、


こうした「攻めの農政」を推し進めることが、


本当に農業従事者やおよび国民を豊かにすることにつながるか?ということです。


柴山氏は、現在の世界における「反グローバル化」の流れを鑑み、


それは難しいのではないか?と主張されています。


私自身もそう思います。


また、農業従事者を厳しい国際競争にさらすことが本当に正しいのか?


という疑問もあります。


仮に、海外で大規模な災害が発生し、


食料の輸入が滞った場合、誰が国民の胃袋を満たすのですか?


国内の生産者しかないでしょう!


農政では、農産品で稼ぐことを考えるよりも、


まずは国民の胃袋を十分に満たすことを第一に考えなければならないと思います。


記事中にもありますが、


こうした当たり前の感覚を有し、


「攻めの農政!」という政治圧力に対抗できるのは、


JAのような中間組織しかありません。


こうした中間組織が十分に機能してきたからこそ、


我々は今、飢えることなく生活ができているのです。


そのことを我々は改めて再確認する必要があります。


自民党は、かつてこうした中間組織を根強く支持基盤にしてきたからこそ、


盤石な政治体制を築くことができていました。


しかし、現在はTPPには参加するは減反政策は廃止するは、


日欧EPA・日米貿易協定で安価な農産品輸入を拡大するは、


さらには農業改革と称してJAを攻撃するは、


農業従事者を締め上げる政策ばかりを推し進めています。


自民党が中間組織を重視した政策に舵を切り直せば、


もっと国民の支持を集められると思うけどなぁ…。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
人気ブログランキングに参加しています。ぜひクリックをお願いいたします。

社会・経済ランキング
にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村

【ツイッター】

最新の投稿

自民党総裁選の危ういシナリオ──仮に党員票トップの高市氏が敗北すると開かれる“消滅への道”

  いよいよ本日、自民党総裁選が行われる。候補者の中でも注目を集めるのが高市早苗氏と小泉進次郎氏だ。 仮に今回の総裁選で、 高市氏が党員票で圧倒的にトップを取りながら、決選投票で小泉氏に議員票で逆転される ──そんな展開になったら、自民党はどんな未来を迎えるだろうか。 結論から...

人気の投稿