農業は国民を食わせることが本分~今、農政に必要な意識とは?~
現在の政権が成立してから、
農業に関して「これからは攻めの農政だ!」
何て言うフレーズをよく耳にするようになりました。
こうしたフレーズや考え方に疑義を呈する記事をご紹介します。
【提言 JAグループに望むこと 柴山桂太・京都大学大学院准教授 周回遅れの農政に否 自給体制の強化急務】
https://www.jacom.or.jp/noukyo/tokusyu/2019/07/190724-38699.php
食料・農業・地域の未来を拓くJA新時代を本当に迎えるために、いまJAグループは何を考え、どのような行動を起こすことが必要なのかについて、柴山桂太京都大学大学院准教授に提言していただいた。
◆危うい"輸出戦略" 国家間の対立激化
グローバル化の時代は長続きしないのではないか。私は以前からそのように主張してきた。歴史を振り返っても、市場が開放され各国の経済が緊密に結びついた時代の後には、必ず巨大な反動の時代がやってくる。19世紀後半から本格化した前回のグローバル化が、やがて各国の保護主義を招くことになったのはその好例である。
20世紀後半から始まった現代のグローバル化も、いずれ激しい逆流に見舞われることになるのではないか...。最近の国際情勢を見る限り、私の予想は大きくは間違っていなかったようである。これまで自由貿易の旗振り役だったアメリカで、公然と保護貿易を唱える大統領が出現する。他の地域に先駆けて市場統合を進めつつあった欧州では、選挙の度に反EU派の政治勢力が台頭している。私の見立てでは、これはまだ新たに始まりつつある歴史的変化の、ほんの序盤に過ぎない。近く起こる次の世界的な景気後退で、すでに表面化しつつある国家間の対立は、ますますエスカレートしていくことになると思われる。
(中略)
そのような視点に立ったとき、危惧されるのは日本の農政である。安倍政権は「攻めの農政」を合い言葉に、農業生産物の輸出を積極的に後押ししている。海外の消費者に販路を拡大することが日本の農業を再生させる切り札になる、との考えに基づいているのだろう。だが、国際政治経済の現状を考えた時、農業の輸出志向戦略は本当に望ましいと言えるのだろうか。
改革派は、農業の国際競争力を高めるために、生産の大規模化や株式会社の新規参入を認める方向に舵を切るべきだと主張している。なるほど品目によっては、そのような改革が求められる分野も存在するのだろう。だが、海外への販路拡大を前提とした農政改革に危うさを覚えるのは、私だけではあるまい。
(中略)
もちろん、農産物の輸出を頭から否定したいわけではない。品目によっては輸出の余地が大きいものもあると聞く。また地域によっては農地の大規模化を進め、余剰生産物の海外販売に活路を求めざるをえないところもあるのだろう。だが、海外市場への依存度を高めるとは、自分たちではコントロールできない国際政治経済の不確実な要因に事業の未来を左右されてしまう、ということでもある。それに国際競争力を獲得するにはさらなるコスト削減に向かわなければならないが、それによって農業従事者の所得が増えるのかは未知数である。
(中略)
だが、日本の農政が、官民一体となってグローバルな市場を積極的に取り込む「重商主義型」に転換することが、長期的に見て本当に望ましいことなのだろうか。冒頭にも述べたように、今や世界各地で、行きすぎた国際分業を自国優位に編成し直そうとする動きが生じ始めている。その過程で生じる国家間の摩擦は、これから大きくなることはあっても小さくなることはないだろう。過去30年以上にわたって続いてきたグローバル化の流れが、この先30年も同じように続く可能性は低い。時代は明らかに「スローバリゼーション」に向かう兆候を示しているからだ。
国際的な緊張が高まるという見通しの下では、各国は農業の自給体制をこれまで以上に強化しようとするだろう。これから農業をグローバル化しようとする日本は、こうした歴史の流れに逆行する「周回遅れ」の存在として孤立していくのではないか。現状を見る限り、そのような疑念が拭えないのである。
(後略)
…。
雑誌「表現者クライテリオン」の編集委員を務められている
柴山氏の記事だけあって、地に足が着いたものだと思います。
もちろん柴山氏も、
日本の農産品を海外に輸出することを否定しているわけではありません。
ただ、一貫して強調されている視点は、
こうした「攻めの農政」を推し進めることが、
本当に農業従事者やおよび国民を豊かにすることにつながるか?ということです。
柴山氏は、現在の世界における「反グローバル化」の流れを鑑み、
それは難しいのではないか?と主張されています。
私自身もそう思います。
また、農業従事者を厳しい国際競争にさらすことが本当に正しいのか?
という疑問もあります。
仮に、海外で大規模な災害が発生し、
食料の輸入が滞った場合、誰が国民の胃袋を満たすのですか?
国内の生産者しかないでしょう!
農政では、農産品で稼ぐことを考えるよりも、
まずは国民の胃袋を十分に満たすことを第一に考えなければならないと思います。
記事中にもありますが、
こうした当たり前の感覚を有し、
「攻めの農政!」という政治圧力に対抗できるのは、
JAのような中間組織しかありません。
こうした中間組織が十分に機能してきたからこそ、
我々は今、飢えることなく生活ができているのです。
そのことを我々は改めて再確認する必要があります。
自民党は、かつてこうした中間組織を根強く支持基盤にしてきたからこそ、
盤石な政治体制を築くことができていました。
しかし、現在はTPPには参加するは減反政策は廃止するは、
日欧EPA・日米貿易協定で安価な農産品輸入を拡大するは、
さらには農業改革と称してJAを攻撃するは、
農業従事者を締め上げる政策ばかりを推し進めています。
自民党が中間組織を重視した政策に舵を切り直せば、
もっと国民の支持を集められると思うけどなぁ…。
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