改革好きのお爺さん~ファーストリテイリング・柳井正社長の使命感~




柳井正さんといえば、


言わずと知れた、「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングの創業者です。


その柳井氏が日経ビジネス誌のインタビューで怒りを強調されています。



【柳井正氏の怒り 「このままでは日本は滅びる」】
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00357/

日本の再成長への一手を考える「目覚めるニッポン」。今回は柳井正ファーストリテイリング会長兼社長。政治的な発言を控える経営者が増えるなか、柳井氏はあえて直言をやめない。怒りともいえる危機感を示し、企業経営から政治まで大改革の必要性を説く。


最悪ですから、日本は。

 この30年間、世界は急速に成長しています。日本は世界の最先端の国から、もう中位の国になっています。ひょっとしたら、発展途上国になるんじゃないかと僕は思うんですよ。

 国民の所得は伸びず、企業もまだ製造業が優先でしょう。IoTとかAI(人工知能)、ロボティクスが重要だと言っていても、本格的に取り組む企業はほとんどありません。あるとしても、僕らみたいな老人が引っ張るような会社ばかりでしょう。僕らはまだ創業者ですけど、サラリーマンがたらい回しで経営者を務める会社が多い。こんな状況で成長するわけがない。

 起業家の多くも上場して引退するから、僕は「日本の起業家は引退興行」と言っています。今、成長しているのは本当の起業家が経営している企業だけです。

 結局、この30年間に1つも成長せずに、稼げる人が1人もいない、稼げる企業が1社もない。いや、1社はあるかもしれないですけど、国の大きさからいったらあまりにも少ないし、輸出に依存していてグローバルカンパニーにはなっていない。稼いでいる人がいなかったら家計は成り立たないでしょう。30年間、負け続けているのにそのことに気付いていません。

 柳井会長はインタビューの冒頭から、怒りをみなぎらせた表情で日本の現状を語った。そして話は政治改革に向かっていった。

 日本出身ということは必要で、日本のDNAはすごく必要だけど、強みが弱みになっています。例えば、みんなと一緒にやるという強みが弱みになってしまっている。たとえば忖度(そんたく)で公文書を偽造するのは犯罪で、官僚なら捕まって当然でしょう。

 民度がすごく劣化した。それにもかかわらず、本屋では「日本が最高だ」という本ばかりで、僕はいつも気分が悪くなる。「日本は最高だった」なら分かるけど、どこが今、最高なのでしょうか。

 新聞のスポーツ欄を見たらよく分かります。日本選手が3位や4位になったという記事ばかりで、1位は結局、誰かが書いてない。オリンピックなどにたきつけたお祭り騒ぎで、ローマ帝国の「パンとサーカス」と一緒ですよ。国民がそうした生活に明け暮れ、気が付いたらパンが全部なくなり、サーカスをする費用もなくなっていくということです。

 いわゆる「ゆでガエル現象」というものが全部でき上がってしまった。私はそんな日本についてあきれ果てているけれど、絶望はできない。この国がつぶれたら、企業も個人も将来はないのですから。だからこそ大改革する以外に道はないんですよ。

まずは国の歳出を半分にして、公務員などの人員数も半分にする。それを2年間で実行するぐらいの荒療治をしないと。今の延長線上では、この国は滅びます。邱永漢さんも亡くなる前に「日本は政治家と生活保護の人だけになる」と言っていました。でも滅びると思っている人がほとんどいません。

 参議院も衆議院も機能していないので、一院制にした方がいい。もっと言えば、国会議員もあんなに必要ないでしょう。町会議員とか村会議員もそう。選挙制度から何から全部改革しないと、とんでもない国になります。


(後略)


…。



今の日本の現状について、かなりお怒りの様ですが…、


言っていることは滅茶苦茶です。


今の日本が20年近く経済成長できていないのは事実ですが、


それは個人や経営者が無能だからではありません。


単にデフレだからです。


デフレ下でGDPを成長させることは不可能です。


また、デフレから脱却するのも個人や経営者の力では不可能です。


政府の経済政策が間違い続けているから、デフレが続き経済成長できていないだけです。


柳井氏は、停滞からの脱却策として「大改革」の言葉を使い、


国家の歳出削減や公務員、国会議員数の削減などを例に挙げられております。


今の日本経済を低迷させている「デフレ」は、


総需要(消費・投資)が不足して生じる現象です。


柳井氏が挙げた国家の歳出削減や公務員、国会議員数の削減は


いずれも総需要を削る政策です。


そんなことをしたら、デフレがますます悪化してしまいますよ💦


…。


平成の30年間は、


こうした影響力のある方々が同じような議論を展開し、


日本は一向にデフレから脱せず、全く経済成長できませんでした。


日本や若者の未来を憂う熱い気持ちは分かります。


ですが、間違った方向にその情熱を使うのは控えていただきたいです。


我々も、こうした改革論に騙されるのは、


いい加減やめましょう。



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経済学者・吉川洋氏の変化~かつては財務省の緊縮財政を批判していた!?~




吉川洋さんと言えば、


東京大学名誉教授であり、日本経済学会会長や


財政制度等審議会会長などを歴任するなど、著名な学者さんです。


そんな吉川氏のインタビュー記事が新聞に掲載されました。



10%が問う日本 識者に聞く 景気の議論に偏りすぎ 立正大学学長 吉川洋氏
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191002&c=DM1&ng=DGKKZO5047523001102019EE8000

消費税率が1日から10%に上がった。税収の増加分は少子高齢化で膨らむ社会保障費用の財源の一部に充当される。5年半ぶりの消費増税をどう評価すればよいのか。今後の国民負担や社会保障給付の課題は何か。識者に聞いた。

軽減税率やキャッシュレス決済のポイント還元制度に教育無償化など政府が様々な手を打ったのは景気の落ち込みを避けたいからだ。しかし今回の対策はやりすぎだろう。とりわけポイント還元は時限措置にせよ分かりにくい。そもそも増税を巡る議論が景気の話にばかり偏っているきらいがある。消費税の本来の役割や意義を考える視点が欠けている。

もちろん増税は景気を左右する。橋本内閣が税率を5%に上げた97年は深刻な不況に陥った。夏にタイから始まるアジア通貨危機があり、秋には山一証券の破綻など金融危機が起きた。ただ後から振り返って景気に最も影響したのは(増税ではなく)金融危機だ。

14年の増税時は消費が低迷した。増税で実質の所得が減るので消費の水準が下がりはする。しかし、その後の消費がなかなか回復していないことに増税は関係していない。本質的な問題は賃金の伸び悩みや社会保障の不安だ。

やはり大事なのは長期の課題、要するに社会保障の将来ではないか。高齢化が進めば社会保障の財源・財政はさらに苦しくなる。それを支える本命が消費税だ。その本質を政治がきちんと説明すべきだ。

よく消費税は逆進的と言われるが、国民年金や国民健康保険などの定額保険料の方が逆進性は大きい。2000年代以降、マクロでみても税よりは社会保障負担が増えている。税のうち所得税は累進的で平等とされるが、捕捉の問題があり、それほど単純ではない。

グローバル化で企業が立地を選ぶ時代、法人税は税率引き下げの国際競争が起きている。そもそも制度上、景気が良くても税金を払っていない企業が少なくない。法人税を払わない企業も消費税は負担する。消費税は徴税コストが低いかたちで課税できる優れた制度と言える。

何より消費税には世代間の公平性がある。保険料や所得税を負担するのは主に現役世代だが、消費税は高齢者も等しく負担する。景気に左右されにくい安定性もあり、社会保障の財源にふさわしい。社会保障が手厚い欧州も付加価値税(日本の消費税に相当)が財源の核になっている。日本が大きな意味でその方向に歩むのは正しい。


(後略)



…。


権威のある方ではあるのですが、


おっしゃられていることに多くの間違えがあるように思えます。


例えば、消費税の公平性について。


多くの思慮が浅い方は「国民全員に課税されるから、公平だ!」


なんて言う方がいますが、トンデモありません。


消費税は、低所得者に厳しく高所得者には痛くもかゆくもない税金です。


それは消費性向(所得から消費に回す割合)と関係しています。


例えば、



・A氏 年収1000万円 消費性向50% 支払った消費税 50万円
・B氏 年収200万円 消費性向100% 支払った消費税 20万円



一見すると、A氏のほうが税負担が重いように思えますが、


所得に占める消費税の割合を計算すると、


A氏は5%、一方でB氏10%と、所得に占める消費税の割合は


B氏の方が2倍になってしまいます。


こんなこと、吉川氏ほどの学者であればとっくに把握されているでしょう。


さらに、記事の中盤で消費税の逆進性が大きいことについて、


社会保険料の方が逆進性が大きいと主張されています。


いや、それは消費税の逆進性の大きさとなんの関係もありません。


こういうのを詭弁と言います。


また、消費税は景気に左右されないことがいい所だと主張されていますが、


景気に左右されないということは、


赤字だろうと所得が低かろうと、容赦なく徴収されるという欠陥税制であり、


税金にあるべき自動安定化装置(ビルトイン・スタビライザー)


存在しない、ということです。


貧乏人は死ね!ということでしょうか…ね?


…。


こうした権威のある方がこうしたインタビューを出されていることを考えると、


悲しくてなりません。


因みに、吉川氏はかつて「転換期の日本経済(岩波書店)」(1999年)を刊行し、


以下の文章を残しています。



「社会保障制度の基本に立ち返りどのようなシステムを設計するかではなく、ともかく財政赤字を抑制するためには数字の上でどのようなことがなされなければならないか、という議論が先行してきた。そのために『国民負担率』をめぐる議論と同じように、社会保障を抑制しないと日本経済が『破局』をむかえるというプロパガンダが使われてきた



…。


何て、真っ当な意見でしょうか。


吉川氏は、ここまで変わってしまわれたんですね…。


残念です。



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