〝A級戦犯〟の外交官・松岡洋右氏が伝えたかったこと 後編~アメリカが焚書した理由と現代の日本人への警告~





前回「〝A級戦犯〟の外交官・松岡洋右氏が伝えたかったこと 前編~天才外交官のロシア・中国・満州観~ https://eskunsf.blogspot.com/2019/12/a.html」からの続きを書きます。


前回の投稿では、アメリカが焚書扱いとした「東亜全局の動揺」を基に、戦前に活躍した外交官・松岡洋右氏が当時、どのようにロシアや中国、満州を見ていたのかについて書きました。


今回は、なぜアメリカが同書籍を焚書扱いにしたかについて書こうと思います。


そもそも焚書とは、書物を焼き捨てる行為のことで、時の権力者が自分たちにとって都合の悪い過去の人物の考え方や事実などを歴史から抹消するために行われます。


言論統制や検閲の一種ですね。


では、アメリカはなぜ「東亜全局の動揺」を焚書したのか…?


それは当然ながら、その書籍にアメリカにとって不都合なことが書かれているからですね。


その不都合なこととは何かと期待(?)しながら同書を読み進めていくと、こんなことが書かれていました。


「大和民族は二千五百年史、否維新以降六十年余年の歴史が示す通り、自己の安寧と存立とを脅かされぬ限り、決して戈をとって立つものではない。日本人は又寡欲である、寧ろ与うることを楽しみ、取ることを忌む。」


このように、日本人は自己防衛以外には安易に武器を持たないことを示した上で、その実例として、



「シベリア出兵、山東出兵などが何故成功しなかったかと問わば、その政策が誤って居たが為ではない、又我が心事が公明でなかった為でもない。主として大和民族のこの天分に累せられたからである。


と、自己防衛の範疇を超えた軍事行動がことごとく失敗に終わっている事実を示しています。


前回紹介したように、昭和初期の日本の外交官が、ロシアや中国(支那)に対して強硬姿勢ではなく、主張すべきことは主張しながら、あくまでも共存共栄の道を志していたこと。


さらに、日本は自存自衛以外望んでなかったことがこの本の記述から浮かび上がってきます。


そりゃ、アメリカも焚書にしますね…。この書籍に書かれていることが日本人に広まれば、日本を悪の帝国扱いにしたかったアメリカの思惑が揺らぎますから。



…。



このほかにも、同書には現代の日本人への警告ともいえることが再三にわたって書かれています。


例えば、満州地域の問題について、同地における自らの権利を(正当な範囲内で)主張しなければ、誰がするのか?日本の代わりに主張してくれるもの好きな国など存在しない、と実に真っ当なご指摘。


また、書籍の結びとして「自ら自己の人格を保持しない者に向かって、他人が之を尊重する道理はない。」と、日本の国威・国益は他国ではなく、自分たち自身で守らなくてはならない、というこれまた真っ当な意見を示しています。


さらには、今の日本人にとって耳が痛くなるような記述もあります。



「…かかる外交の徹底を可能ならしめた我が国民の無関心、無理解、無気力、そしてこの国を蔽うている所の堕気を一掃しなければならぬ」



譲歩を繰り返す幣原外交に苦言を呈した上で、それを招いた国民の姿勢についても糾弾しています。


いやー、国民が政治に無関心な間に、グローバル資本・投資家などにいいように搾取される今の日本人にも言えることですね…。



…。



いかがでしょうか?


少し書籍の内容を紹介したまでですが、これまでの戦前の歴史観が少し変わったかと思います。


もちろん、この「東亜全局の動揺」に書かれていることを妄信するわけではありません。


が、時には違う視点の歴史観に触れてみることも大切だと思います。


まだまだ焚書になった書籍はたくさんあるのでしょう。それらには未来の日本人に伝えたかったことがたくさん書かれているのでしょうね…。


全部復活しねえかな?笑



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〝A級戦犯〟の外交官・松岡洋右氏が伝えたかったこと 前編~天才外交官のロシア・中国・満州観~





松岡洋右氏といえば、学生時代に学校で日本史を勉強した知識を元にすれば、「日独伊三国同盟の成立を主導し、日本を戦争に導いた人」「国際連盟脱退を決めて、日本を世界から孤立させた人」というイメージあるかと思います。


つまり、軍国主義者という感じであまりよくないイメージですね。


現在、経営科学出版さんが粋な企画をしており、その松岡氏が満州事変勃発の直前に書き上げた「東亜全局の動揺」という本を復刻販売しています。



【戦後、GHQに封印された天才外交官の遺言が復活】
https://kamijimayoshiro.jp/KJBURN01/ad/adw/lp01/?gclid=EAIaIQobChMIurmG06Ge5gIVWKmWCh1AHAqxEAAYASAAEgJwvvD_BwE



無料(送料のみ)とのことで、この本を読んでみました。


ちょっとした内容や感じたことなどを紹介しようと思います。



…。



松岡氏は、当時のロシア、中国(当時はまだ中国大陸に正当な政府は存在せず、軍閥が割拠する状態)との外交について、前任の幣原外相による譲歩を重ねる外交により、ロシアには海洋権益を脅かされ、中国大陸での通商の妨害を招いていると指弾しています。


国際的にも正当な権利の下で得た権益・通商活動であり、それを脅かされるとは何事か!というわけですね。


これだけ聞くと、「松岡氏って強硬な考え方だなぁ」と感じる人もいるかもしれません。


しかし、その指弾と同時に、「私は日露国交断絶論者でも、不当にロシアに向かって強硬論を吐くものではない」、さらに中国の妨害に対して軍を出動させたことについて、「腕力は外交ではない」とまで書き記し、軍が出動して外交がなくなってしまった現状を嘆いてさえいます。


強硬論者というイメージが変わりませんか?


さらに、満州地域についても興味深い記述が出てきます。


まずはその地域に住む朝鮮人について。


彼らは中国人(漢民族)から差別されており、日本人と同様、それ以上にその活動を妨害されている。


それに対して朝鮮人は暴動を起こした。その行動は決して許されることではないとした上で、なんとそれには同情を禁じ得ない、としています。


自らが治める地域で起きた暴動について、その行動に同情を寄せるなんて、なんと情に厚い人でしょうかね…。


また、満州地域において日本人の排斥を進める中国人(漢民族)に対しては、元々、満州地域は満州民族(清帝国を創った民族で、書籍執筆時に清は辛亥革命で滅亡していた)が支配していた地域であり、漢民族もいわば日本人と同じ移民である。


それを満州地域はあたかも漢民族固有の領土だなどと主張するのはおかしい。


さらに言うと、漢民族は日本人が満州地域を懸命に投資を行いインフラなどを整えたからこそ、そこに移民して来たのではないのか!と事実を元に糾弾しています。


よく「戦前の日本は中国を侵略した」という人がいますが、満州地域についていえば、現在、中国大陸に存在する中華人民共和国(および同国を建国した漢民族)とは何の関係もない地域です。


中国共産党が日本を貶めるために「我々は侵略を受けた!」などと言っているだけなんですね。


どうでしょうか?実際の当時の事実を知る外交官の言葉だからこそ、真実味がありませんか?


次回に続きます。



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陰謀論が放つ不思議な魅力~思考を止めるきっかけになっていませんか?~




隔月刊誌「表現者クライテリオン」の編集委員を務める川端祐一郎氏が、興味深い記事を寄稿されていたので、ご紹介!



【陰謀論に取り憑かれる人々】
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20191113/

2016年に行われたイギリスの「ブレグジット」に関する国民投票や、トランプ氏が当選したアメリカ大統領選挙において、SNSなどオンラインでの宣伝合戦が大きな役割を果たしたのではないかという議論があります。

特に有名なのは、「ケンブリッジ・アナリティカ」というイギリスのコンサル会社が、フェイスブックなどから取得した数千万人分にものぼる個人データを用いて分析モデルを構築し、これがブレグジット推進派やトランプ陣営の選挙作戦に投入されたという話です。米大統領戦では、トランプ陣営が同社の分析に基づいてターゲットを定め、ヒラリー陣営の100倍の費用をかけてフェイスブック広告を展開したらしい。

このケンブリッジ・アナリティカ社については、

「フェイスブックなどの個人データを違法に利用したのではないか」
「ヒラリー・クリントンを中傷する虚偽広告の流布に関わったのではないか」
「ロシア当局による選挙への介入をサポートしたのではないか」

といったいくつもの疑惑が指摘されていて、同社は法的・倫理的な責任が問われる中、2018年に破産しました。

最近、ケンブリッジ・アナリティカ社で選挙戦に携わった後、不正行為の内部告発を行った元幹部やエンジニアらに密着した『The Great Hack』というドキュメンタリー映画を見ました。当事者本人たちがインタビューに答えているので、どんな経緯や戦略で選挙戦に臨んだのかがよく分かって興味深いですし、恐らく同社が法的・倫理的に問題のある行為を行っていたのは本当なのでしょう。「ビッグデータ」「洗練された解析技術」「虚偽情報」の組み合わせによる世論操作が、民主主義を危機に陥れるという問題提起も重要だと思います。

ただ、この映画を観ていて違和感も覚えました。オンラインでの宣伝合戦の裏には「ダーク・ワールド」(闇の世界)が広がっていると言ったり、フェイスブックのような巨大企業を「デジタル・ギャングスター」(デジタルやくざ)と呼んだりしていて、これらが民主主義に対する深刻な驚異になっていると主張するのですが、冷静に考えるとオンラインでの情報戦の効果を誇張しているようにも思えるからです。

映画の中でも説明されているように、ケンブリッジ・アナリティカがターゲットとしたのは、「EU離脱か残留か」「トランプかクリントンか」について態度を決めかねている数%の人々のみのようです。つまり、浮動票を相当程度動かしたのが事実であったとしても(その効果についても疑問視する声はあるようですが)、それ以前に、少なくとも国民の半数近くがEU離脱やトランプ氏を支持していたことは間違いないわけです。


(中略)


川端氏はブレクジットやトランプ大統領が当選した選挙で、陰謀論が跋扈していることについて、違和感を示した上で、陰謀論に傾倒すれば出来事の本質を見誤ると指摘しています。


さらに、


もちろん全ての陰謀論が不合理なわけではないのですが、陰謀論は往々にして一面的な説明になりがちです。これは、グレイ氏の話とは逆の「新自由主義者の陰謀」についても同様でしょう。新自由主義的な政策を「陰謀」的に推進する人々は、もちろんたくさんいるはずです。しかし同時に新自由主義というのは我々の「時代精神」のようなものでもあると考えるべきで、「一部の悪人が闇の世界から我々を操っている」という説明だけで満足するわけにはいかないと私は思います。


(後略)


とした上で、陰謀の存在は認めるとして、それは無数に存在しており、むしろなぜその陰謀が実現するに至ったのかを考えると、そこには社会構造や歴史の趨勢などの動かしがたい社会の動きがあることに思考を向ける必要があると書かれています。


慎重かつ地に足の着いた意見だと思います。


この広い世界を、陰謀を抱くごく少数の人々で動かすのはほぼ不可能に近いでしょう。


であれば、それ以外の大多数の人々の影響なくしては世の中は動きません。


この考察が正しいとすれば、世の中を良い方向に動かすのも、悪い方向に動かすのも大多数の人々に属する自分たちにかかっているということです。


こうした緊張感を持つことが、世の中をより良い方向に進めるための一要素だと僕は思います。


例えば、日本で20年以上続く緊縮財政も、確かに財務省などが自らの利益のためにそれを意図的に続けさせている部分はあるかと思います。


しかし、その緊縮財政がこれほどまで長期間続くのは、世論が圧倒的にその方針を支持しているからにほかなりません。


「国の借金で破綻する」という言説を多くの人が信じ込み、財政再建は待ったなしだと緊縮財政を支持する。


仮に財務省などが緊縮財政を進めようと陰謀を抱いても、それを実行するには大多数の人が同意しなければなしえないのです。


…。


確かに、陰謀論には不思議な魅力が付いて回ります。


なぜなら、何かの出来事について考える際に、「これは○○が仕掛けた陰謀だ!」と決めつけてしまえば、それ以上は何も考えなくいいからです。


思考停止ですね…。


陰謀の存在を認めつつ、それにとらわれることなくなぜその陰謀が実現したのかを多面的に考える。


こうしたバランス感覚のある思考を身に着けたいですね。


川端先生、大変勉強になりました!



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