時代遅れの構造改革論~平成時代の失敗を令和に持ち込むな~




日本経済新聞の紙面には、「大機小機」という匿名のコラムがあります。


匿名ゆえに比較的自由度が高い内容が載っているようです。


先日、そのコラムに「時代遅れでは?」と感じる内容の記事が。



【大機小機 香港の自由と日本】
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191018&c=DM1&ng=DGKKZO5110761017102019EN2000

米へリテージ財団とダウ・ジョーンズが毎年発表している世界の経済自由度指数によると、常に1位香港、2位シンガポール、最下位の北朝鮮が定着している。この指数は、1人当たり所得、経済成長率、起業家のダイナミズム、民主主義の程度、貧困率の低下、平等などと非常に高い相関があることが分かっている。1人当たり国内総生産(GDP)はシンガポール8位、米国9位、香港17位で日本の26位よりも高い。

西側諸国の価値観では経済発展で豊かになれば、国民が自由を求めて民主主義が浸透するとされていた。GDPが世界第2の中国ではなお民主化の兆しが見えず、この価値観の違いが米中摩擦の根本原因となっている。

中国の経済自由度指数は100位で、1人当たりGDPは70位だ。経済的自由に政治的自由が伴わないのは中国がなお1人当たり所得では貧しいからか、あるいは豊かになっても民主化しない国家が可能なのかが問われている。自由をよりどころに発展した香港の1人当たり所得は既に高いため、香港の一国二制度を巡る混乱はこの問題の先行きを占う世界史的意味を持つ。

一方、日本の自由度指数ランキングは2001年に14位だったが19年は30位に低下している。これは市場経済に移行した新興諸国が積極的な自由化政策と既得権益のしがらみのない急速な新技術導入で成長し、順位を上げたためである。アジア太平洋地域に限っても、台湾、マレーシア、韓国よりも低い8位である。

日本でも多様な成長戦略が提言されているものの、行動にスピード感がなく、その差は開くばかりである。低成長の原因は少子高齢化や人口減少ではなく、成長の原動力である新技術導入と普及の遅れにある。かつての規制緩和のかけ声も最近では影が薄い。

明治維新や高度成長期など最も成長した時期は既存体制の破壊を恐れず貪欲に新技術や新システムを導入した。全国民が市場の喪失や職種転換など変化の荒波に巻き込まれたが、めまぐるしい変化にそれぞれが懸命に対応してきた結果が現在の日本である。

一定の豊かさを得ると変化で失うものも増えて政治は保守化する。豊かになっても国際的競争を意識して国の活力を維持し続けるのは、より良い次の時代への貪欲な渇望である。

(桃李)



…。


「経済新聞」の立場から、


日本経済を世界と比較して論考するのは大切なことですが、


日本経済が伸び悩んでいることを「規制緩和」などの


「構造改革」が足りないからだ、というのはあまりにも的外れです。


日本経済が成長できていないのは、単にデフレだからです。


記事では、新技術導入の普及の遅れを嘆いていますが、


それはデフレゆえに企業が投資に踏み込むことができないからです。


今は、日本の多くの企業は人手不足に悩んでいます。


デフレから脱却できれば(+移民政策を進めなければ)、


人手不足を埋めるための設備・技術開発投資に多くの企業が乗り出すでしょう。


というか、そうせざるを得なくなる。(でないと、人手不足倒産)


日本経済の将来を憂うことは結構ですが、


20年以上実行し続け、我々をひたすら貧困化させてきた


時代遅れの構造改革論を振りかざすのは控えてもらいたいです。


デフレの今必要なのは、規制緩和・構造改革ではなく、


総需要(消費・投資)不足を補うための


政府による大規模な財政出動です。


日本経済新聞社のほどの影響力のある媒体が、


政府に財政出動を求めてくれたらいいんだけどなぁ…。(無理だけど)



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「食」の安全保障意識を高めよう!~農業は国の根幹を支えるもの~




元内閣官房参与で、京都大学大学院教授の藤井聡氏が、


農業協同組合新聞に寄稿されていました。



【「食料自給率」向上は「国家安全保障」に必須『藤井聡・京都大学大学院教授』】
https://www.jacom.or.jp/noukyo/tokusyu/2019/10/191009-39335.php

わが国のカロリーベース食料自給率は史上最低の37%まで落ち込んでしまった。私たちは食料を海外に6割以上も依存していることになる。大きな要因が農業生産基盤の弱体化であり、農村地域の危機である。それはこの国のかたちにも関わる問題である。たんなる農業振興の方策ではなく、この国で人々が持続的に暮らしていくための視点を持って考えなければらないと考え、この特集を企画した。
 第2回は、藤井聡京都大学教授に寄稿していただいた。

あらゆるインフラは、私達の社会、経済、暮らしを支える極めて枢要な役割を担うが、「食」に関するインフラ、つまり「食産業インフラ」は、それらの中でもとりわけ重要だ。日本経済がどれだけ疲弊しようが、エネルギーの輸入が途切れようが、食料さえ自給できていれば、とりえず生きて行くことができる一方で、どれだけ経済が強くても、食料が途絶えれば国民は生きて行くことすらできなくなってしまうからだ。

 かくして、「食料安全保障」、そしてそのための「食料自給率」の向上は、我が国における枢要な国家政策に位置づけられているのである。
 しかも、仮に海外から食料を輸入可能な状況が持続できたとしても、莫大なカネを、食料輸出国に支払い続ける状況を回避することはできない。そしてそれは、日本経済に巨大なデフレ圧力をかけることとなり、経済を激しく疲弊させることとなる。しかも特定の外国から「食料を買い続けなければならない」という事態は、当該国との外交における大きな弱みとなる。
 つまり、食料自給率が低ければ、(1)国民の健康と生命が守れなくなるリスクを負うばかりで無く、(2)持続的な海外への支出拡大とそれを通した日本のデフレ不況拡大の巨大リスクを負っていると同時に、(3)海外の食料供給国達に将来日本を脅すのに使えるかもしれない巨大な「外交カード」をタダで配り歩いていることになるのである。こうした理由から、食料自給率問題はあらゆる国家において、安全保障の根幹を成す問題と位置づけられているのである。


(中略)


 以上の議論をまとめれば、次のようになる。
 食料自給率の向上は、日本の経済成長のためにも、安全保障の観点からも極めて重要な国家的課題である、したがって、日本以外の先進諸外国では、食料自給率の向上を企図して、豊富な国費を投入している。ところが我が国日本は、諸外国に比して低い水準の国費をしか農業に投入していない。しかも愚かな事に、そのような状況下であるにも関わらず、自由貿易を加速してしまっている。そうなれば必然的帰結として今、我が国の食料自給率は低い水準に留まり、そして今後、さらに低下していくことになる。
 つまり我が国政府は、食料自給率を下落させ、日本経済をさらに悪化させ、国家安全保障を悪化させる政治を、自らの取り組みを通して推進してしまっているのである。
 しかも、政府が進めている「安全保障の毀損」「経済悪化」は、「緊縮」プラス「自由貿易推進」だけではない。
 農業の発展にとって必須である農家の協力体制をさらに弱体化させるような農協改革を進めている。さらには、日本の農業の国産化において何よりも大切であった法制度の一つである「種子法」を解体してしまった。それを通して、日本の農業はさらに弱体化し、外資の影響力をさらに強化してしまった。
 こうして我が国の農業は「風前の灯」のような状況に追い込まれてしまっている。そしてそれは、繰り返すが日本の貴重な所得を諸外国にばら撒くことを通して経済低迷圧力を強化させており、かつ、安全保障を悪化させるという事を通して、日本の農家が苦境に立たされるのみならず、全ての国民の利益が激しく毀損する事態を招き続けているのである。


(後略)



…。


日本の食料自給率が低いことを問題視する声が、


私が小学生の頃から上がっていたように思います。


しかし、政府が諸外国に比べて農業の保護が極めて薄い以上、


自給率が低迷して当たり前です。


なぜ、これほどまで農業の保護が手薄なのか…?


その要因は様々あると思いますが、


最たるものは、「安全保障観の欠如」だと思います。


農業は、藤井氏が挙げられているように、


食うに困ることがなければ、とりあえずは生きていけるという


国として極めて重要な政策・産業として位置づけられるものです。


しかし、我々の多くはいつの間にか、


「食料の確保なんてたやすいこと。いざとなればお金を出して外国から輸入すればいい」


という甘い認識を抱くようになったのではないでしょうか?


食べ物が食卓に滞りなく届くのは、無数の人が動いた上で成り立っていますし、


外国から輸入しようとした際に、


その国が大規模な災害に遭い、輸出分が確保できなくなったらどうしますか?


その国は自国民を飢えさせてまで、輸出なんてしてくれませんよ。


国防と同じで、多くの人が「どのように自分たちが食べていくか」


という安全保障観を恐らく忘れてしまっているんでしょうね。


でなければ、諸外国との農業保護の差を知れば、


政府はもっと農業を保護すべきだ!という声が挙がるはずです。


かつて、「日本の農業は守られ過ぎている。もっと競争を促せば成長できる」


なんて意見を政治家でおっしゃられていた方がいたようですが、


実態をよく把握されていない上に、


仮にそんなに成長の余地があるのならば、


農業は後継者不足に悩むことなく、もっと若者が就農していると思います…。


…。


こうした記事にあるような事実を知り、


「食」の安全保障意識を高めていきましょう!



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