思考の転換を!~ステレオタイプな公共事業・悪玉論を捨て去ろう~




先日、日本経済新聞の紙面に


政府の財政状況を強烈に糾弾する記事が掲載されました。



【10%が問う日本(2)止まらぬ借金の誘惑 増税しても緩む財政規律】
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191002&c=DM1&ng=DGKKZO5047798001102019MM8000

道東自動車道、米子道、徳島道……。この春、全国16区間の高速道路で4車線化の計画が動き出した。約1兆円の財政融資資金を使うもので、新名神高速道路の6車線化事業も進む。


国の借金で資金を集める財政融資資金。かつては過剰な道路建設への反省から削減の対象だった。だが足元では低金利を追い風に道路融資に勢いが出てきた。「今は絶好のチャンス。来年度はさらに増額を勝ち取りたい」。自民党の国交族議員らは意気込む。


異常な構図定着

消費税が税率3%で導入されたのはバブル最盛期の1989年。翌90年の予算では歳出削減努力もあり、「赤字国債ゼロ」を達成した。それから約30年。税率は10%に上がったが、財政は転がるように悪化した。

バブル崩壊やリーマン・ショックで税収が細り赤字国債が復活。高齢化で社会保障費が膨らむ中、景気が復調しても補正予算などで経済対策を重ね、歳入の3割超を借金でまかなう異常な構図が定着した。

消費税10%で税収は年5.6兆円増えるが、幼児教育・保育の無償化など給付の拡充に2.8兆円を充てるので、財政健全化に回るのは2.8兆円しかない。新たな借金に頼らずに国と地方の政策経費を賄えるかを示す基礎的財政収支(PB)の赤字は2019年度に15兆円も残る。

増税は財政健全化への道筋を示すのが本来あるべき姿。だが政府は18年6月にPBの黒字化目標を25年度に5年先送りした。20年度予算への各省庁の概算要求は過去最大の約105兆円に拡大。歳出に厳しく切り込む姿勢はない。


(中略)


「効率性」に疑問

まずはバラマキをやめるべきだ。財務省の19年度予算の点検では35事業の約8割で「効率性」に疑問があった。スタートアップ企業育成が目的の経済産業省の補助金の行き先は実際には大企業もあった。

その上で緩んだ規律をただす仕掛けが要る。英国は複数年の経済財政予測を作成し、歳出や税収を中立に検証する独立機関をリーマン危機後に設置した。政治の影響を受けずに財政を監視するのが役割だ。

短期国債の外国人保有比率は3月末で約7割を超えた。「世界経済の変化などで外国人が国債売りに転じれば、金利急騰の引き金になりうる」(ピクテ投信投資顧問の市川真一シニア・フェロー)。歳出改革に残された時間は少ない。



…。


私としては、一文足りとも読む価値のない記事だと思います。


が、社会通念に沿った考え方からすれば、真っ当なのでしょう…。


序盤では、政治家からの交通インフラ整備への予算要求について、


「族議員」という、何だか悪代官かのような雰囲気のフレーズで批判しています。


そもそも、政治家は有権者の求める政策を実現するために、


予算を確保することが何よりもの仕事なんですが…、


そこに関してはどうなんでしょうか?


経済対策についても同様です。


政府は景気が落ち込んだ際に、国民の所得や雇用を守るために、


財政拡大などの景気対策を打つのは当たり前です。


それを批判するということは、


国民の暮らしよりも「財政規律」の方が大切だと言っているに等しいわけです。


記事の終盤では、政府の事業の効率性について批判しています…が、


政府の事業なんて、効率性が低くて当たり前です。


もちろん、過去において明らかなムダがあったことも確かなようです。


しかし、効率性が低く民間企業が手を出せない事業を進めるのが、


政府の役割のはずです。


こうした現実を無視して、


一口に政府の事業にもっと効率性を!というのはあまりにも幼稚です。


…。


こうした記事が掲載されるということは、


政府の財政赤字を頭ごなしに否定する考え方が、


未だに社会通念を支配していることを意味しています。


もちろん、記事を書いた記者も自信をもって世に出したことでしょう。


一度定着した社会通念を変えることの困難さがよくわかります。


このままでは、デフレ脱却に必要な財政拡大の実施など望むべくもなく、


日本は早晩、経済大国の座から落ちていくでしょう。


早期の思考の転換が求められています。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
人気ブログランキングに参加しています。ぜひクリックをお願いいたします。

社会・経済ランキング
にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村

【ツイッター】
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

人気の投稿

経済学者・吉川洋氏の変化~かつては財務省の緊縮財政を批判していた!?~

「令和」に向けた政策転換キャンペーン~経済停滞ばかりだった平成の政策から脱却しよう!~

「財政の矢」の実行を~しょぼいごまかしの財政出動はもうこりごり!~