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河井案里氏の公職選挙法違反疑惑〜閣僚の辞任が続き安倍政権の痛手となるか〜

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広島選出の国会議員、 河井克行 法務大臣が、 妻で自民党・参議院議員の 河井案里 氏に 公職選挙法違反の疑いが浮上し、 その責任を取って法相を辞任しました。 【河井克行法相辞任 後任は森雅子氏 菅原氏に続く辞任ドミノ】 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191031-00000594-san-pol 河井克行法相(56)=衆院広島3区=は31日、妻の案里参院議員(46)=広島選挙区=の陣営が7月の参院選で法定上限を超える報酬を運動員に渡していたとされる公職選挙法違反疑惑の責任を取り、安倍晋三首相に辞表を提出し、受理された。事実上の更迭となる。 首相は後任に自民党の森雅子元少子化担当相(55)=参院福島選挙区=を起用。森氏は認証式を経て正式に就任した。  9月11日の第4次安倍再改造内閣発足後、閣僚の辞任は公選法違反疑惑で10月25日に辞任した菅原一秀前経済産業相に続き2人目で、1週間で閣僚2人が辞任するのは異例。野党は当面、国会審議に応じない方針で、首相の任命責任を厳しく追及する考えだ。  首相は官邸で記者団に「責任を痛感している。国民に深くおわびしたい」と述べ、陳謝した。その上で「菅原氏に続き、河井氏が辞職することに厳しい批判があることは真摯(しんし)に受け止めなければならない。身を引き締めて行政の責任を果たしたい」と語った。 (後略) …。 河井案里氏は今夏の参議院選挙で国政初当選した人物。 何と、現職のベテラン政治家・ 溝手顕正 氏を破っての当選でした。 かねてから、当時の広島選挙区は 自民党が河井氏と溝手氏の両名に候補者を出した異例の選挙として ちょっとした話題になっていました。 何やら、 総理官邸側が河井氏を推し、 自民党側は溝手氏を推していた ようで、 同じ組織が分裂したイメージの悪い選挙でしたね。 また、 県知事や市長が溝手氏への支持を露骨に示すなど、 政治家のさまざまな思惑が見え隠れしていました。 私自身は、支持基盤の厚い溝手氏が勝つかと思っていましたが、 結果は 河井氏の勝利 。 なんか後

東洋経済オンライン・『令和の新教養』から学ぶ「物語」の必要性〜MMTを広める切り口になるか?〜

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東洋経済オンラインにて不定期で連載されているコラム 「令和の新教養」 。 先日、そのコラムに 島倉原 氏の記事が載りました。 【MMTが日本に「公益民主主義」をもたらす理由 「租税国家論」に代わる「新たな物語」が必要だ】 https://toyokeizai.net/articles/-/307183 内外で議論の最先端となっている文献を基点として、これから世界で起きること、すでに起こっているにもかかわらず日本ではまだ認識が薄いテーマを、気鋭の論客が読み解き、議論する「令和の新教養」シリーズ。 今回のテーマは、ホットな話題となっている現代貨幣理論(MMT)。このたび上梓された『MMT現代貨幣理論入門』の監訳者である島倉原氏が、日本にとってのMMTの意義を説き明かしていく。 (後略) …。 島倉氏は、 MMT(現代貨幣理論) を提唱する中心的人物である、 L・ランダル・レイ教授 の著作 「MMT 現代貨幣理論入門」 の監訳を務められた方です。 その島倉氏は、上記の記事の中でMMTについて丁寧に解説した上で、 MMTの認知を高め、経済・財政に関する正しい知識を一般に広める上で、 通貨や税に関する解釈を得て、 「公益民主主義」 の物語を創る必要性 について書かれています。 (前略) 必要なのは「公益民主主義の物語」か 『表現者クライテリオン』2019年9月号における柴山桂太氏の論稿「国家が貨幣をつくる」では、MMTが人々に受け入れられるうえで最大の障害となるのは、 租税国家論に代わる新たな物語の不在なのではないか、という問題提起がなされている。 租税国家論 とは、 「国民の税金で政府は運営されている。だから政府は国民のために働かなければならない」という物語 であり、柴山氏によれば、これが近代以降の国家において、人々の納税意識を支えてきた。 (中略) 必要なのは「正しい貨幣観」に基づく発想の転換 「税金が財源」という見方は政府を家計や企業と同一視することにほかならず、それゆえ私益の論理と結びつきやすいという側面がある。 MMTの貨幣観に基づいて、民主主義に基づく政府や通貨制度が公益のために果たしうる積極的な役割を認め、それらへのいわば信任投票として税金を理解

今こそ政治の力を!~財政主権を財務省から取り戻し、緊縮財政の打破を~

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大規模な災害が相次ぐなか、 政治の世界においても、さすがに防災インフラの整備に向けて 公共事業拡大の声 が上がり始めています。 【公共事業予算確保で圧力…台風被害で「防災・減災」関心 自公、長期の「強靱化」計画】 https://www.yomiuri.co.jp/politics/20191027-OYT1T50261/ 台風19号の被害を受けて、自民、公明両党が国土強靱きょうじん化に向けた公共事業費の拡大圧力を強めている。 防災や減災に対する国民の関心が高いうちに、継続的な社会資本(インフラ)整備の予算獲得を確実にしたいとの狙いからだ。 財政規律重視 財務省難色   両党は23日に幹事長、国会対策委員長間で防災・減災と国土強靱化に関するA4判1枚の合意文書をまとめた。強靱化を「国家百年の大計」と位置付け、政府に対し、中長期の新たなインフラ整備計画を作り、必要な予算を確保するよう求める内容となっている。  主導したのは、国土強靱化の旗振り役である自民党の二階幹事長だ。二階氏は今月17日、台風19号で利根川の氾濫を防ぐ働きをしたとされる八ッ場ダム(群馬県長野原町)を視察した。  同ダムを巡っては、2009年に誕生した民主党政権が「コンクリートから人へ」をスローガンに一時、建設中止を表明した経緯がある。二階氏は視察で「この現状を見ると『自民党も重要なことを指摘しているな』と思うはずだ」と述べ、野党を当てこすった。  公明党も自民党と足並みをそろえている。12年の第2次安倍内閣発足後、一貫して国土交通相ポストを押さえていることもあり、この間の国政選挙では防災・減災対策を公約の目玉に据えてきた。今年9月まで約4年、国交相を務めた石井啓一幹事長代行を党の対策本部長に充て、今月25日には台風対策の提言を政府に提出した。石井氏は「災害対策は国政の最重要課題の一つ」と強調した。   政府による国土強靱化基本計画に基づく現在の緊急対策は3か年で、20年度に期限切れを迎える。自民、公明両党は、今から公共事業による防災・減災への機運を盛り上げて、21年度以降の新たな対策の作成、予算規模の拡充につなげたい考えだ。   現在の公共事業予算は1990年代後半のピーク時に比べ半分近くにとどまる。 東日本大震災による復興需要も落ち

認識の甘いエリート経営者~消費税の影響を舐めてはならない~

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10月1日に消費税率が引き上げられました。 消費税は消費に対する罰金 なので、 消費が今まで以上に低迷するのは明らか に思えるのですが、 そうではないと考える方もいるようです。 【月曜経済観測 増税後の消費行動 来月は巡航速度に アサヒGHD社長 小路明善氏】 https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191021&c=DM1&ng=DGKKZO5120910020102019NN1000 消費増税に伴う駆け込み購入と買い控え、ラグビー・ワールドカップ(W杯)の盛り上がり、台風19号に備えた備蓄などで消費活動の変動が大きくなり、実像が見えにくくなっている。アサヒグループホールディングスの小路明善社長に消費の現状と先行きについて聞いた。 「コト消費」が支え ――消費税率が10%に上がった10月1日前後の商況について教えてください。 「9月のビール類の販売数量は(前年の新製品の在庫積み上げ等の)特殊要因を除くと前年同月比で17%増で、業界全体の動向(推計)とほぼ同じだった。10月は中旬までは4%増となっていて全体を通すと前年を若干下回るだろう。前回(2014年)の消費増税時は税率引き上げ前に17%増、増税後は3%減だったので傾向は同じだ」 「ただ増税を機に消費低迷が長引いた前回のようなことにはならないと考えている。おそらく10月末から11月中旬ころには平準化していると思うし、そこから巡航速度で推移していくだろう。 消費の谷のような現象は起きないはずだ」 ――なぜでしょうか。 「増税後のポイント還元などの政府の支援策が下支えしているからだ。 加えて生活者の購買行動が2年くらい前から大きく変わってきていて、 イベントなどの 『コト消費』 に敏感に反応するようになった。メリハリがより効いている 」 「ラグビーW杯を例に挙げると、アサヒビール直営のビアホールのビールの売り上げは前年比で3倍になっている。31日にはハロウィーンを控えている。年末年始もいろいろなイベントがあり、期待できる」 価格上昇の条件 「 もはや商品の機能や品質のような『物性価値』では、競合他社に比べて違いが出しづらくなっている。新たな購買体験による共感、感動など主観的なもので

日本が財政拡大し世界の規範に!~世界が日本の積極財政を求めている~

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世界の主要国が 金融政策偏重を見直し、 財政政策も活用すべきだという声が挙がる 中、 消費税率の引き上げなど、 緊縮財政路線をひた走る 日本 の今後に注目が集まっています。 『【G20関連】財政政策重視、金融政策頼みに限界 日本の対応注目』 https://www.sankei.com/economy/news/191019/ecn1910190012-n1.html 今回の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では世界経済の悪化リスクに対処するため、 公共事業などへ国の歳出を増やして景気を刺激する財政政策を重視すべきだとの意見が相次いだ。 これまで各国は金融政策に頼ってきたが、限界や弊害が表面化してきたことが背景にある。今後はまず、消費税増税のタイミングに台風19号直撃が重なった 日本の対応が世界の注目を集めそうだ。  「政策手段を総動員し、強固で持続可能、バランスのとれた成長を目指すべきだ」。麻生太郎財務相は閉幕後の記者会見でこう訴えた。財務省高官によると、 「初日の討議で、景気回復には金融政策だけでなく、財政政策も重要だとの発言が出た」 という。  会議に先立つ15日、国際通貨基金(IMF)は2019年の世界全体の実質経済成長率の予想を3・0%と、前回7月時点から0・2ポイント下方修正した。下方修正は昨年10月以降、5回連続。米中摩擦の悪影響が、思った以上に深刻化していることが背景にある。  世界経済の変調に、各国は金融政策の強化で対応してきた。日銀や欧州中央銀行(ECB)はマイナス金利政策を長期化し、米連邦準備制度理事会(FRB)は今年に入り2回、利下げしている。  ただ結果的に金融政策は成長減速を食い止められていない。また、低金利による利ざや縮小で金融機関の業績が悪化するなどの「副作用」も鮮明になり、「金融システムが破壊されている」(ドイツ銀行のゼービング最高経営責任者)といった批判が強まっている。 これを受け 主要国で強まり始めたのが、「金融政策頼み」をやめ、財政政策にシフトすべきだとの声 だ。IMFのゲオルギエワ専務理事は今月8日の講演で「通貨政策と金融政策だけでは役に立たない」と主張。 ECBのドラギ総裁も9月、「今こそ財政政策が責任を負うべき時だ」と訴えた。 (後略)

時代遅れの構造改革論~平成時代の失敗を令和に持ち込むな~

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日本経済新聞 の紙面には、 「大機小機」 という匿名のコラムがあります。 匿名ゆえに比較的自由度が高い内容が載っているようです。 先日、そのコラムに 「時代遅れでは?」 と感じる内容の記事が。 【大機小機 香港の自由と日本】 https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191018&c=DM1&ng=DGKKZO5110761017102019EN2000 米へリテージ財団とダウ・ジョーンズが毎年発表している世界の経済自由度指数によると、常に1位香港、2位シンガポール、最下位の北朝鮮が定着している。この指数は、1人当たり所得、経済成長率、起業家のダイナミズム、民主主義の程度、貧困率の低下、平等などと非常に高い相関があることが分かっている 。1人当たり国内総生産(GDP)はシンガポール8位、米国9位、香港17位で日本の26位よりも高い。 西側諸国の価値観では経済発展で豊かになれば、国民が自由を求めて民主主義が浸透するとされていた。GDPが世界第2の中国ではなお民主化の兆しが見えず、この価値観の違いが米中摩擦の根本原因となっている。 中国の経済自由度指数は100位で、1人当たりGDPは70位だ。経済的自由に政治的自由が伴わないのは中国がなお1人当たり所得では貧しいからか、あるいは豊かになっても民主化しない国家が可能なのかが問われている。自由をよりどころに発展した香港の1人当たり所得は既に高いため、香港の一国二制度を巡る混乱はこの問題の先行きを占う世界史的意味を持つ。 一方、 日本の自由度指数ランキングは2001年に14位だったが19年は30位に低下している。これは市場経済に移行した新興諸国が積極的な自由化政策と既得権益のしがらみのない急速な新技術導入で成長し、順位を上げたためである。アジア太平洋地域に限っても、台湾、マレーシア、韓国よりも低い8位である。 日本でも多様な成長戦略が提言されているものの、行動にスピード感がなく、その差は開くばかりである。低成長の原因は少子高齢化や人口減少ではなく、成長の原動力である新技術導入と普及の遅れにある。 かつての規制緩和のかけ声も最近では影が薄い。 明治維新や高度成長期など最も成長した時期は既存体制の破壊を恐れず貪欲に新技

「食」の安全保障意識を高めよう!~農業は国の根幹を支えるもの~

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元内閣官房参与で、京都大学大学院教授の 藤井聡 氏が、 農業協同組合新聞に寄稿 されていました。 【「食料自給率」向上は「国家安全保障」に必須『藤井聡・京都大学大学院教授』】 https://www.jacom.or.jp/noukyo/tokusyu/2019/10/191009-39335.php わが国のカロリーベース食料自給率は史上最低の37%まで落ち込んでしまった。私たちは食料を海外に6割以上も依存していることになる。大きな要因が農業生産基盤の弱体化であり、農村地域の危機である。それはこの国のかたちにも関わる問題である。たんなる農業振興の方策ではなく、この国で人々が持続的に暮らしていくための視点を持って考えなければらないと考え、この特集を企画した。  第2回は、藤井聡京都大学教授に寄稿していただいた。 あらゆるインフラは、私達の社会、経済、暮らしを支える極めて枢要な役割を担うが、「食」に関するインフラ、つまり「食産業インフラ」は、それらの中でもとりわけ重要だ。 日本経済がどれだけ疲弊しようが、エネルギーの輸入が途切れようが、食料さえ自給できていれば、とりえず生きて行くことができる一方で、どれだけ経済が強くても、食料が途絶えれば国民は生きて行くことすらできなくなってしまうからだ。  かくして、 「食料安全保障」、そしてそのための「食料自給率」の向上は、我が国における枢要な国家政策に位置づけられている のである。  しかも、仮に海外から食料を輸入可能な状況が持続できたとしても、莫大なカネを、食料輸出国に支払い続ける状況を回避することはできない。そしてそれは、日本経済に巨大なデフレ圧力をかけることとなり、経済を激しく疲弊させることとなる。しかも特定の外国から「食料を買い続けなければならない」という事態は、当該国との外交における大きな弱みとなる。  つまり、 食料自給率が低ければ、(1)国民の健康と生命が守れなくなるリスクを負うばかりで無く、(2)持続的な海外への支出拡大とそれを通した日本のデフレ不況拡大の巨大リスクを負っていると同時に、(3)海外の食料供給国達に将来日本を脅すのに使えるかもしれない巨大な「外交カード」をタダで配り歩いていることになる のである。こうした理由から、食料自給率問題はあらゆる国家において、安全

イギリスの町から移民問題を考える~イギリス国民はなぜEU離脱を選択したのか~

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イギリスの EU離脱 が迫る中(予定では10月末)、 同国・ ボストン での早期離脱を望む声が日経新聞で紹介されています。 【ブレグジット前夜(3) 移民はもううんざりだ】 https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191009&c=DM1&ng=DGKKZO5068107007102019EA1000 「ブリュッセル官僚に牛耳られるのは、もううんざりだ! 早く離脱実現を」。 10月末の欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」を阻止する英法案可決から一夜明けた9月5日。ロンドンから北に150キロメートルほど離れた町ボストンで、140年続く衣料品店を営むリチャード・チアー(65)は語気を荒らげた。10月末までの離脱を約束してきた英首相のボリス・ジョンソン(55)の行く手を阻む英議会への憤りをあらわにする。 ボストンは中世の教会などの建物が残る以外は特段の特徴がない、人口7万人弱の小さな町。しかし2016年のEU離脱を問う国民投票で、一躍有名な町へ転じた。 離脱賛成票が全国最高の7割超に達したから だ。 理由はEU拡大に伴う東欧からの移民の急流入。ボストンの人口は01年から11年までの10年で約15%も増え、約7%増だった英国全体を大きく上回った。 中心部から5分も車を走らせれば、広大な野菜畑が広がり、大型の農業トラクターが行き交う。収穫された野菜は、近くの加工施設に運ばれ、洗浄、袋詰めや冷凍を経てロンドンなど大都市のスーパーマーケットへ出荷されていく。 低賃金の作業を黙々と支えるのは、ポーランドやルーマニアなど東欧やバルト3国からの移民たちだ。 しかし移民の急流入は、家賃の高騰や病院の混雑などにつながり、昔からのボストンの住民の不安をかき立ててきた。元船員で年金暮らしのビル・スモーリー(74)は「小さな町なのに、街中で外国語が飛び交う。受け入れるのは簡単ではない」とこぼす。 (後略) …。 移民問題 について、 ボストン のようにもろに影響を受けている地域の声は やはり切実なようです。 我が国も昨年末、 出入国管理法を改正(改悪?) し、 本格的な移民受け入れに舵を切りました。 こうした政策を推進した勢力は、 記事で

災害に国家なしでは立ち向かえない~緊縮財政を打破し、防災インフラの整備を~

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台風19号 が各地に甚大な被害をもたらしています。 そんな中、 日本経済新聞 に以下の記事が掲載されました。 【「もう堤防には頼れない」 国頼みの防災から転換を】 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50958710T11C19A0MM8000/ 首都を含む多くの都県に「特別警報」が発令され、身近な河川が氾濫する事態を「自分の身に起きうること」と予期していた市民は、どれほどいただろうか。 近年、頻発する災害は行政が主導してきた防災対策の限界を示し、市民や企業に発想の転換を迫っている。 2011年の東日本大震災は津波で多数の死傷者を出し、防潮堤などハードに頼る対策の限界を見せつけた。これを教訓に国や自治体は、注意報や警報を迅速に出して住民の命を守る「ソフト防災」を強めた。しかし18年の西日本豪雨でその限界も露呈した。気象庁は「命を守る行動を」と呼び掛けたが、逃げ遅れる住民が多かった。 堤防の増強が議論になるだろうが、公共工事の安易な積み増しは慎むべきだ。 台風の強大化や豪雨の頻発は地球温暖化との関連が疑われ、堤防をかさ上げしても水害を防げる保証はない。 人口減少が続くなか、費用対効果の面でも疑問が多い。 西日本豪雨を受け、中央防災会議の有識者会議がまとめた報告は、行政主導の対策はハード・ソフト両面で限界があるとし、「自らの命は自ら守る意識を持つべきだ」と発想の転換を促した。 (後略) …。 これだけ毎年、災害が多発する中で、 日経新聞としては、 防災インフラの整備などはもう限界!国民は政府を頼るな! と言いたいようです。 読んでいて、何だか悲しい気持ちになりました…。 公共事業バッシングを改め、 国民の生命・財産を守るために、防災インフラ整備に予算を回そう! と、提言するのかと思えば、その全く逆を主張する。 記事を書いた記者の方の本位ではないと信じたいですが、 紙面に載せたということは、会社として問題ないということなのでしょう。 国内最大の経済新聞が、こうした残酷な記事を堂々と載せる。 何かが間違っていると感じなければ、おかしいと思います。 さらに同記事は、防災インフラ整備について 人口減少を

改革好きのお爺さん~ファーストリテイリング・柳井正社長の使命感~

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柳井正 さんといえば、 言わずと知れた、 「ユニクロ」 などを展開する ファーストリテイリング の創業者です。 その柳井氏が日経ビジネス誌のインタビューで怒りを強調されています。 【柳井正氏の怒り 「このままでは日本は滅びる」】 https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00357/ 日本の再成長への一手を考える「目覚めるニッポン」。今回は柳井正ファーストリテイリング会長兼社長。政治的な発言を控える経営者が増えるなか、柳井氏はあえて直言をやめない。怒りともいえる危機感を示し、企業経営から政治まで大改革の必要性を説く。 最悪ですから、日本は。  この30年間、世界は急速に成長しています。日本は世界の最先端の国から、もう中位の国になっています。ひょっとしたら、発展途上国になるんじゃないかと僕は思うんですよ。  国民の所得は伸びず、企業もまだ製造業が優先でしょう。IoTとかAI(人工知能)、ロボティクスが重要だと言っていても、本格的に取り組む企業はほとんどありません。あるとしても、僕らみたいな老人が引っ張るような会社ばかりでしょう。僕らはまだ創業者ですけど、サラリーマンがたらい回しで経営者を務める会社が多い。こんな状況で成長するわけがない。  起業家の多くも上場して引退するから、僕は「日本の起業家は引退興行」と言っています。今、成長しているのは本当の起業家が経営している企業だけです。   結局、この30年間に1つも成長せずに、稼げる人が1人もいない、稼げる企業が1社もない。 いや、1社はあるかもしれないですけど、国の大きさからいったらあまりにも少ないし、輸出に依存していてグローバルカンパニーにはなっていない。稼いでいる人がいなかったら家計は成り立たないでしょう。30年間、負け続けているのにそのことに気付いていません。  柳井会長はインタビューの冒頭から、怒りをみなぎらせた表情で日本の現状を語った。そして話は政治改革に向かっていった。  日本出身ということは必要で、日本のDNAはすごく必要だけど、強みが弱みになっています。例えば、みんなと一緒にやるという強みが弱みになってしまっている。たとえば忖度(そんたく)で公文書を偽造するのは犯罪で、官僚なら捕まって当然で

経済学者・吉川洋氏の変化~かつては財務省の緊縮財政を批判していた!?~

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吉川洋 さんと言えば、 東京大学名誉教授 であり、 日本経済学会会長や 財政制度等審議会会長などを歴任 するなど、著名な学者さんです。 そんな吉川氏のインタビュー記事が新聞に掲載されました。 【 10%が問う日本 識者に聞く 景気の議論に偏りすぎ 立正大学学長 吉川洋氏 】 https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191002&c=DM1&ng=DGKKZO5047523001102019EE8000 消費税率が1日から10%に上がった。税収の増加分は少子高齢化で膨らむ社会保障費用の財源の一部に充当される。5年半ぶりの消費増税をどう評価すればよいのか。今後の国民負担や社会保障給付の課題は何か。識者に聞いた。 軽減税率やキャッシュレス決済のポイント還元制度に教育無償化など政府が様々な手を打ったのは景気の落ち込みを避けたいからだ。しかし今回の対策はやりすぎだろう。とりわけポイント還元は時限措置にせよ分かりにくい。そもそも増税を巡る議論が景気の話にばかり偏っているきらいがある。消費税の本来の役割や意義を考える視点が欠けている。 もちろん増税は景気を左右する。橋本内閣が税率を5%に上げた97年は深刻な不況に陥った。夏にタイから始まるアジア通貨危機があり、秋には山一証券の破綻など金融危機が起きた。ただ後から振り返って 景気に最も影響したのは(増税ではなく)金融危機だ。 14年の増税時は消費が低迷した。増税で実質の所得が減るので消費の水準が下がりはする。しかし、その後の消費がなかなか回復していないことに増税は関係していない。本質的な問題は賃金の伸び悩みや社会保障の不安だ。 やはり大事なのは長期の課題、要するに社会保障の将来ではないか。 高齢化が進めば社会保障の財源・財政はさらに苦しくなる。それを支える本命が 消費税 だ。 その本質を政治がきちんと説明すべきだ。 よく消費税は逆進的と言われるが、国民年金や国民健康保険などの定額保険料の方が逆進性は大きい。 2000年代以降、マクロでみても税よりは社会保障負担が増えている。税のうち所得税は累進的で平等とされるが、捕捉の問題があり、それほど単純ではない。 グローバル化で企業が立地を選ぶ時代、法人税は税率引き下げ

思考の転換を!~ステレオタイプな公共事業・悪玉論を捨て去ろう~

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先日、 日本経済新聞 の紙面に 政府の財政状況を強烈に糾弾する 記事が掲載されました。 【10%が問う日本(2)止まらぬ借金の誘惑 増税しても緩む財政規律】 https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191002&c=DM1&ng=DGKKZO5047798001102019MM8000 道東自動車道、米子道、徳島道……。この春、全国16区間の高速道路で4車線化の計画が動き出した。約1兆円の財政融資資金を使うもので、新名神高速道路の6車線化事業も進む。 国の借金で資金を集める財政融資資金。かつては過剰な道路建設への反省から削減の対象だった。だが足元では低金利を追い風に道路融資に勢いが出てきた。「今は絶好のチャンス。来年度はさらに増額を勝ち取りたい」。自民党の 国交族議員 らは意気込む。 異常な構図定着 消費税が税率3%で導入されたのはバブル最盛期の1989年。翌90年の予算では歳出削減努力もあり、「赤字国債ゼロ」を達成した。それから約30年。税率は10%に上がったが、財政は転がるように悪化した。 バブル崩壊やリーマン・ショックで税収が細り赤字国債が復活。高齢化で社会保障費が膨らむ中、景気が復調しても補正予算などで経済対策を重ね、歳入の3割超を借金でまかなう異常な構図が定着した。 消費税10%で税収は年5.6兆円増えるが、幼児教育・保育の無償化など給付の拡充に2.8兆円を充てるので、財政健全化に回るのは2.8兆円しかない。新たな借金に頼らずに国と地方の政策経費を賄えるかを示す基礎的財政収支(PB)の赤字は2019年度に15兆円も残る。 増税は財政健全化への道筋を示すのが本来あるべき姿。 だが政府は18年6月にPBの黒字化目標を25年度に5年先送りした。20年度予算への各省庁の概算要求は過去最大の約105兆円に拡大。歳出に厳しく切り込む姿勢はない。 (中略) 「効率性」に疑問 まずは バラマキ をやめるべきだ。財務省の19年度予算の点検では35事業の約8割で「効率性」に疑問があった。スタートアップ企業育成が目的の経済産業省の補助金の行き先は実際には大企業もあった。 その上で緩んだ規律をただす仕掛けが要る。英国は複数年の経済財政予測を作成

「アベ・ショック」を浸透させよう!~デフレを深刻化させる安倍政権の経済政策~

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経済評論家の 三橋貴明 氏は、 今回の消費税率引き上げ以降、様々な経済の低迷要因が加わり、 大規模な経済危機 「アベ・ショック」 が起きると多くのメディアで語られています。 【クローズアップ・消費増税10%】国民を貧困化させる税 アベ・ショックが日本を襲う【三橋貴明・経世論研究所所長】 https://www.jacom.or.jp/nousei/closeup/2019/190927-39219.php 10月1日から消費税が10%に引き上げられる。消費の冷え込みが懸念され農業経営とJAの事業にとっても影響は少なくない。しかし、そもそも消費税とはどんな税金なのか。その負担によって私たちの暮らしに還元され、将来世代にも豊かさがもたらされるものなのか。引き上げを前に 三橋貴明 ・経世論研究所所長に聞いた。 ◆消費に対する罰金  --そもそも消費税をどう考えますか。 三橋貴明 氏  消費税の政策的な意味は、実は消費に対する罰金 です。炭素税は二酸化炭素排出企業に対する罰金であり、タバコ税はタバコを吸うことに対する罰金。特定の行動をさせないための罰金としての税ですから、消費税は消費を減らすことが政策目的になります。実際、消費増税で実質消費の量が確実に減ります。たとえば、 2014年4月の8%への消費増税のときには年間で8兆円分の消費が実質で減りました。  重要なことは農業も含めすべての産業において、生産と消費と所得がイコールになるという大原則があることです。つまり、消費が8兆円減った2014年度は、その分が生産されていないということになる。ということはその分の所得を失った人たちがいるということです。実際、実質賃金が大幅に下落しました。単年度では、何とリーマンショック時を超えました。  今回は食料品などは8%に据え置かれますが、国民経済はつながっているため、食料品や新聞は引き上げられずに済んだと安心している人もダメージは受ける。なぜなら、10%に引き上げられた他の製品を生産している人たちの所得が減ってしまうためです。間違いなく日本国民の貧困化が進んでしまう。 (中略) ◆経産と財務の思惑  今回は、面白い 経産省と財務省の取引 がありました。それは キャッシュレス決済に対するポイント還元制度 です。  簡単に

消費税10%の先を提言する人~緊縮財政派はさらなる増税を狙っている~

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消費税が 10% に上がって数日が経ちました。 「もう当分は増税はないだろう…」 と考えている人も多いでしょう。 が、そんなはずはありません。 税率が上がった10月1日その日に、 10%以上の引き上げを提唱している方がいます。 【Deep Insight 消費税10%の先を考える】 https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191001&c=DM1&ng=DGKKZO5039534030092019TCR000 私たちが買い物するときに払う消費税率がきょうから10%になった。2度にわたる増税の延期を含め、ここ数年の消費税の話といえば税率を上げるか上げないかばかり。足元では、税率を8%に据え置く軽減税率の対象に何が含まれるのか、政府のポイント還元はどの店で受けられるのか、といった類いの情報があふれている。 その手の話はもちろん気になるが、一歩引いてとらえると、 きょうは日本が長年の宿題をひとつ片付けた日でもある。 税制の専門家が集まる政府税制調査会(首相の諮問機関)が消費税率を2桁にすべきだと答申に初めて記したのは16年前の2003年 。旧民主党政権は12年、野党だった自民、公明両党と3党合意をまとめ、消費税率10%へのレールを敷いた。曲折はあったが、ようやくここまでたどり着いた。 次のレールはまだ敷かれていない。どこへ向かうのか私たち一人ひとりが考え、発信し、進んでいくことになる。いま、日本の未来にふさわしい税制を探すスタート台に立ったともいえる。消費税率を上げる上げないにかまけているうちに世界の変化はスピードを増してきた。宿題を片付けたと安堵しているヒマはない。 (中略) 私はやはり消費税の比重を高め、名実ともに税制の主役にもってくるしかないと思う。 年金や医療、介護の費用はこれからいや応なしに膨らんでいく。 次世代にツケを先送りしないための財源として、所得税や法人税、社会保険料を重くするより、消費税に頼る近未来をイメージしている。 課題先進国と呼ばれる日本は、人類史に例のない高齢化を筆頭にいくつものテーマを抱えている。 経済成長や物価は低迷 し、国内総生産の2倍を超える公的債務は心配の種だ。正社員の夫を専業主婦が支える均一的な家族像は

消費増税対策の闇~キャッシュレス還元で本当に得するのは誰なのか?~

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政策コンサルタントの 室伏謙一 氏が、 今回、消費増税対策として用意された ポイント還元制度 のデタラメさを紹介しています。 【消費税増税のポイント還元は「どうしようもない愚策」と断言できる理由】 https://diamond.jp/articles/-/215961?display=b (前略) そもそもキャッシュレス決済によることを、ポイント還元の条件とすること自体おかしな話だ。  しかも、ポイント還元の実施期間は9ヵ月限定である。 やはり真の目的は、手数料負担から、中小・零細事業者を中心になかなか導入が進まないキャッシュレス決済の導入促進を図ること、と考えるべきであろう。  別の見方をすれば、ポイント還元による集客やカード利用手数料への補助金をインセンティブにしつつ、実質的にはカードインフラを導入・利用することを強制しているのと同じようなものである。  先にも述べたとおり、 キヤッシュレス決済インフラ利用に係る手数料は、この期間中は上限が3.25%で一部を国が補助するとされているが、期間終了後の手数料設定は自由である。  極論すればキャッシュレス決済事業者の意のままにできる。キャッシュレス決済事業者が手数料を引き上げる可能性は否定できず、事業者の負担増は避けられなくなる可能性が高いだろう。  しかし、一度キャッシュレス決済インフラを導入し、お客さんもそれに慣れてしまった状況で、特に中小事業者は、手数料を上げるならキャッシュレス決済はやめますと簡単に言えるだろうか?(優越的地位の濫用に該当する事例が出てくる可能性すらあるのではないか、との声もある。詳しくは後述)。 キャッシュレス決済導入の実質的な強制は 中小・零細企業に「死ね」と言っているに等しい  それ以前の問題として、キャッシュレス決済インフラを利用する以上、いずれにせよ手数料は支払い続けなければならず、それは小規模事業者や零細事業者にはそもそも大きな負担である。手数料負担に耐えられず潰れる店も出てくるかもしれない。  実際、消費税増税後の価格は柔軟に設定できるというのが政府の理解であり、大企業については、「消費税引き上げ後、自らの経営資源を活用して~価格設定を行うことに何ら制約はありません」とされている。つまり、増税分を価格転嫁しなければな